トッテナムは2021-22シーズン、苦しい序盤戦を強いられたが、アントニオ・コンテ監督が途中就任して以降、3バックシステムを磨き上げ、冬の移籍市場でユベントスからウルグアイ代表MFロドリゴ・ベンタンクール、スウェーデン代表FWデヤン・クルゼフスキを獲得すると、反撃の狼煙を上げたチームは怒涛の快進撃を見せ、最終的には終盤で4位に滑り込む快挙を成し遂げた。来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権を手にしたことで今夏の移籍市場でも順調に事が進んでおり、インテルからクロアチア代表MFイヴァン・ペリシッチを早期に獲得。今後も積極的な大型補強が予想されているが、トッテナムは今後移籍市場でどのような立ち回りを見せるべきなのだろうか?現時点での実現度をあえて鑑みず、「Off The Ball」編集部内で独自の見解を談論した。
トッテナムの運命を分けた瞬間
トッテナムはCL出場権の獲得に成功したことで、主力の放出を回避することができるだろう。レヴィ会長が移籍市場に1億ポンド(約166億円)を投じるという報道も出ているし、来季は本気でプレミアリーグ制覇を目指す姿勢が見受けられる。実際、早期にペリシッチを獲得するなど、今夏の移籍市場で積極的な動きを示している。今のトッテナムのスカッドには隙がない。マンチェスター・シティとリバプールの二強時代が続いているが、来季はトッテナムも優勝争いに加わるだろう。
もしトッテナムが4位で終えることができていなければ、リバプールがソン・フンミンの獲得に動いていたという報道も出ていましたしね。そう考えると、トップ4フィニッシュに導いたアントニオ・コンテ監督の手腕に脱帽です。アーセナルとの直接対決での完勝が、トッテナムの未来の運命を変えた瞬間だったと思っています。ソン・フンミンもハリー・ケインも残留した上で、新たな戦力を補強できる。4位で終えていなければ、もしかしたら2人とも去っていたかもしれません。4位に滑り込んだことは、本当に大きいことでした。
トッテナムの弱点を補う存在は…
今でも充分な戦力を揃えているとは思うが、補強するべきポイントを挙げるとするなら、前線になるのかな。トッテナムはハリー・ケインとソン・フンミンのホットラインが代名詞であり、この2人の連携だけで長年にわたり数十ゴールを生み出してきた。阿吽の呼吸という表現は、彼ら2人のためにあるような言葉。一方、どちらか1人でも欠けてしまえば、パフォーマンスがガクっと落ちてしまうのが、今のトッテナムの弱点でもある。その課題を改善する存在として、前線であればどこでもプレーできるエバートンのブラジル代表FWリシャルリソンの獲得に動くのはありだと思う。ピンポイントで右ウイングの補強候補を挙げるなら、リーズ・ユナイテッドのブラジル代表FWハフィーニャかな。
僕もリシャルリソンの獲得には賛成ですね。トッテナムはクルゼフスキの加入により、3トップがようやく定まりました。一方で、彼らのスーパーサブも必要かと。リシャルリソンであれば、中央も、右も左も、遜色なくこなせます。前線の誰かが長期離脱しても、リシャルリソンがいればチームが大きく崩れることもないはずです。ケインとソン・フンミンの依存問題を一発で解決する切り札として期待できます。次点で挙げるとすれば、インテルのアルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネスですね。彼も最前線と右のポジションを得意としているので、3トップとポジション争いをさせることで、チームを活性化させることができます。
※2022年7月1日、トッテナムはブラジル代表FWリシャルリソンの獲得を正式発表。
※2022年7月13日、バルセロナはブラジル代表MFハフィーニャの獲得を正式発表。
鎌田大地のトッテナム移籍説に潜む懸念点
中盤に関しては、そこまで大きな補強は必要ないんじゃないかな。ベンタンクールとホイビュアのダブルボランチはリーグ屈指の強度を誇っているし、出番の減ったウィンクスの動向によっては補填が必要かもしれないが、大型補強まですることはない。鎌田大地の獲得も噂されているけど、トッテナムで定位置を確保できるとしたらどこだろう?と考えると、どこも厳しいんじゃないかと思う。強いていうなら、クルゼフスキとのポジション争いになるが、彼が加入してからの半年間のパフォーマンスを見る限り…定位置を奪うのはあまり現実的ではなさそう。
確かに鎌田は加入したとしても、トッテナムでどのような役割を任せられるのか、いまいちはっきりしない気がしますね。ルーカス・モウラが退団するとなるとシャドーのスーパーサブは必要ですが、鎌田は途中から出場して違いを生み出すタイプではありませんので、なかなか難しいかと…。同点、もしくはビハインドの場面で、得点を奪うためのカードとして鎌田を投入、というのはあまりイメージが湧きません。それこそ、それであれば伊東純也の方が適している気がします。年齢的な面を考えれば、やはりベストな選択肢はリシャルリソンになるかと思いますが。
注目すべきトッテナムの右ウイングバック要員
ウイングバックはどうかな?
右WB要員として、ウルブスにレンタルバックしたスペイン代表MFアダマ・トラオレの獲得はいいのではないでしょうか。左にペリシッチ、右にトラオレと、両WBがゴリゴリに攻め込む超攻撃的な3バックシステムが面白いのではないかと。バルセロナに期限付き移籍して、最終的には買取オプションを行使されることはありませんでしたが、リーガ・エスパニョーラでも圧倒的なドリブル突破を披露していました。ドリブルに関しては、彼は世界でトップクラスであることを証明しています。
これまでのコンテ監督の采配を考えると、両WBにどちらも攻撃的な選手を置くというのはないんじゃないかなと個人的には思うかな。左に攻撃的なペリシッチを起用するのであれば、右はバランスを取れるタイプを配置するのではないだろうか。そういう意味では、ACミランのイタリア代表DFダビデ・カラブリアがいいのではないかと思っている。彼は攻撃参加のタイミングも絶妙で、守備時のリスクヘッジにも長けている。1vs1の対応に関しては、右SBとして世界屈指と言えるのではないだろうか。そのため、可変的な4バックへの対応も問題ない。ペリシッチとの相性を考えるならば、カラブリアは最高の相棒になるのではないかな。CBに関しては、インテル時代の愛弟子であるスロバキア代表DFミラン・シュクリニアルやイタリア代表DFアレッサンドロ・バストーニの獲得が手堅いと思う。
トッテナム夏の補強策のまとめ
2021-22シーズンのトッテナムは、途中就任したコンテ監督の元、強度の高い3バックシステムで着実な成長を見せ、4位フィニッシュでCL出場権を手にした。すでに即戦力としてペリシッチの獲得に成功しており、今後も積極的な補強が予想されている。今夏の補強候補として、
- ブラジル代表FWリシャルリソン(エバートン)
- ブラジル代表FWハフィーニャ(リーズ・ユナイテッド)
- アルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネス(インテル)
- スペイン代表MFアダマ・トラオレ(ウルブス)
- イタリア代表DFダビデ・カラブリア(ACミラン)
- スロバキア代表DFミラン・シュクリニアル(インテル)
- イタリア代表DFアレッサンドロ・バストーニ(インテル)
上記の名前が挙げられた。ハリー・ケイン、ソン・フンミンら主力も流出する可能性がほとんどないため、来季はさらなる戦力アップを望むことができ、悲願のプレミアリーグ初制覇に向け、マンチェスター・シティやリバプールと優勝争いを演じる準備は整っていると言えそうだ。