プレミアリーグ、エバートンに所属するリシャルリソン。ブラジル代表でもその能力でゴールを量産する彼は、2022年夏にトッテナムへの完全移籍を果たした。25歳にしてセレソンの看板選手になりつつあるリシャルリソンは、一体どのような選手なのか?生い立ちのエピソードも交えて本記事で紹介していく。
生年月日 | 1997年5月10日 |
国籍 | ブラジル |
所属クラブ | トッテナム・ホットスパーFC |
ポジション | FW |
身長 | 184cm |
利き足 | 右足 |
経歴 | アメリカ・ミネイロ→フルミネンセ→ワトフォードFC→エバートンFC→トッテナム・ホットスパーFC |
リシャルリソンは主にトップか左ウィングで相手のゴールを狙うが、攻撃的なポジションであればこなせる。
ブラジル人選手ではおなじみの高いテクニックとドリブル、そして豊富なアイデアで勝負をどんどん仕掛けて相手の守備を翻弄する。一度ドリブルが波に乗ると、彼はスピードも持ち合わせているため、ファールをしなければなかなか止めることはできない。また強靭なフィジカルも備わっており、プレミアリーグの厳しいプレスを受けても倒れずボールキープができる。この能力はリシャルリソンの起用法に大きく影響を与えており、それまで主だった左ウィングに加えて、センターフォワードという選択肢をチームにもたらしている。
この高いテクニック、スピードのあるドリブル、そして強いフィジカルで中に切り込んでからの高精度なシュートがリシャルリソンの大きな武器である。プレミア移籍当初は若さゆえに好不調の波が顕著にあったが、年々安定した成績を残せるようになっている。
またブラジル人といえば足元の技術に目が行きがちだが、リシャルリソンのもう一つの武器はヘディングである。184cmと少し高めの身長と、競り合いの技術、そしてジャンプ力を活かしたヘディングシュートは、屈強なDFが集うプレミアリーグでも十分通用しており、エバートンに多くのゴールをもたらしている。
一方、若干荒々しい一面も持ち合わせており、相手選手とのいざこざや危険なタックル、シミュレーション等でカードを受けてしまう場面も少なくない。
2018年8月、エバートンデビュー戦となったウルヴァーハンプトン戦。PAの角付近でボールを受けるとドリブルし、逆側のゴール下隅へGKが届かないコースの冷静なシュートを決める。試合は引き分けだったが、「エヴァトニアン」の信頼を初めから掴む素晴らしいプレーを見せた。
2020年1月、ブライトン戦で決めたゴールも紹介する。PA内でアンダーのクロスを受けると、相手守備が寄せる中での冷静な切り返しでDFを騙し、シュートコースを自らの手で作ってゴール。高いテクニック、メンタル、そして判断力がなければ決められないゴールであった。
2014年にアメリカ・ミネイロのユースチームに加入し、翌年トップチームへ昇格。同年7月、後半22分に交代出場でデビューすると、10分で得点を決めた。その後はセリエBを戦うチームのスタメンに定着し、昇格に貢献した。
この活躍からフルミネンセへ移籍。10代ながら安定した活躍を見せるブラジル人ストライカーは徐々に欧州クラブの獲得リストへ乗るようになった。アヤックスも狙う中、A代表未経験ながらイングランドの労働許可が下りて、17-18シーズン最初に1120万ポンド(約16億円)でワトフォードへ移籍した。
リシャルリソンはすぐにプレミアリーグの環境に適応し、第2節で早速初得点をあげる。6-7節には2試合連続で後半アディショナルタイムに得点し、これによって勝ち点4をワトフォードにもたらし、強烈なインパクトを与えた。
トップ6のチームからの興味も引くようになったシーズン終了後、彼をプレミアの舞台に招いたマルコ・シウバ監督がワトフォードからエバートンへ就任。恩師の誘いを受け、リシャルリソンも4000万ポンド(約58億5000万円)でエバートンに移籍した。
エバートンでは開幕節で2得点、第2節も1得点と最初から実力を発揮。2018-19からの4シーズンでリーグ戦43得点と、エバートン、そしてプレミアリーグを代表するようなエースにまで成長した。
2018年にブラジルA代表デビューを果たすと、セレソンの新エースとして名を馳せるように。コパ・アメリカ2019では12年ぶりの優勝に貢献。また東京オリンピックではドイツ戦でハットトリックを達成するなど5得点で得点王に輝き、ブラジルの金メダル獲得の立役者となった。
2022年に約100億円もの巨額でトッテナムへと完全移籍を果たした。
5人兄弟の長男として生まれたリシャルリソンは、地元でサッカーを習いつつ家族のためにアイスクリーム売りとして働いていた。犯罪組織が跋扈するほどの貧困地域で苦しい生活を送る中、その貧困を抜け出すためサッカー選手を志したが、入団テストを受けても不合格が続き、一時はサッカーの道を諦めかけていた。それでも夢を捨てきれなかった彼は、これが最後と決めて地元から600km離れたアメリカ・ミネイロの本拠地、ベロオリゾンテへトライアルを受けに行く。この時持っていたのは片道分のお金のみだったという。もしこのトライアルに落ちた時は地元に帰ることができない―まさしく背水の陣で臨んだトライアルでついに合格。サッカー選手という夢の続きが描けるようになったのだ。
トライアルに落ちようとも諦めず、一世一代の大勝負にまで打って出た結果が、今のセレソンの期待のストライカー、リシャルリソンに繋がっているのである。
セレソンのストライカーとして注目を集めるリシャルリソン。貧困地域からサッカーで成功した姿は母国ブラジルのサッカー少年のみならず、世界中に勇気を与えていることだろう。クラブキャリア、代表キャリアのどちらでも「伝説」になれるかもしれないポテンシャルを持つリシャルリソンに、これからも注目していこう。