バルセロナのカンテラで育ち、ジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)に才能を見出され、「カンテラ出身選手の最高傑作」とも称されたスペイン代表MFチアゴ・アルカンタラ。現在所属するリバプールでもその才能を随所に見ることが出来る。そんなチアゴのプレースタイルやこれまでのキャリア、スーパープレーを紹介していく。
生年月日 | 1991年4月11日 |
国籍 | スペイン |
所属クラブ | リバプール |
ポジション | MF |
身長 | 174cm |
利き足 | 右足 |
経歴 | FCバルセロナ→FCバイエルン・ミュンヘン→リバプールFC |
メインポジションはインサイドハーフやダブルボランチの一角。バイエルン時代は元スペイン代表MFハビ・マルティネスやドイツ代表MFレオン・ゴレツカといった強靭なフィジカルの持ち主とボランチを組むことが多かった。守備のタスクはもう一人のボランチに任せながら、自身は柔軟なポジショニングを取っていた。リバプールではインサイドハーフとして、攻撃時にはポゼッションに多く関わり、守備時にも果敢にプレッシングをしていくようになっている。
そんなチアゴのプレースタイルを一言で表すとすると、それは「中盤の指揮者」であろう。その理由は、チアゴのプレーにより試合が展開していくからだ。まず特徴的なのは類い稀なるパスセンス。長短パスを織り交ぜながらゲームメイクをしていく。基本は中盤の低い位置でボールホルダーに近いポジションを取り、ショートパスを散らしながらボール保持を高める。ポゼッションしていく中で相手の守備陣形にスペースができると、すかさず中央への縦パスや、ワイドへのロングフィードを入れゴールに直結するキーパスを配給する。
また、相手がプレスに来た状況でよく見せるのが、上半身のフェイントを使ったボールキープである。パスを受ける瞬間にボディーフェイントを入れ、巧みにプレスに来た相手を1枚剥がす。この一瞬のプレーにより相手の守備の枚数を1枚減らすことができ、チームの陣形を前進させることや、相手のプレッシングを一人で打開することが可能なのだ。リバプールでは、相手チームが素早いゲーゲンプレスからのカウンター対策として、あえてボールを持たせて低い位置で守備陣形を整え、ロングカウンターを狙う戦術を取ってくることが多い。そんな相手に対してチアゴがいることにより、相手の陣形を崩すことを狙い、リバプールを率いるユルゲン・クロップ監督はそのために彼を獲得したのであろう。
ただ、チアゴの弱点を挙げるとフィジカル面とケガ耐性の弱さが挙げられる。リバプールのインサイドハーフの守備タスクとしては、アンカーともう一人のインサイドハーフの3枚のMFで中盤エリアを守る。FWのプレス状況によっては相手のサイドバックまで出てプレスをかける必要が出てきたり、味方のサイドバックが最終ラインから釣り出された場合は、そのカバーに入ったりと、守備エリアが広く、運動量が非常に多くなる。他の選手と比較して体格が大きいとは言えないチアゴにとっては、過酷な守備タスクを担っていると言えよう。そのタスクを常に続けているイングランド代表MFジョーダン・ヘンダーソンやオランダ代表MFジョルジニオ・ワイナルドゥム(現パリ・サンジェルマンFC所属)の強靭なフィジカルと比較するのは酷であるが、リバプールではそれが求められるのだ。素早いプレッシングとスライディングでのボール奪取を意識し果敢なプレーを見せているが、その過酷さゆえ、90分間フル出場することが難しかったり、ケガが多くなったりしている原因ともなっている。
2021年11月24日のUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ第5節FCポルト戦でのセンセーショナルボレーシュート。
相手陣内でフリーキックを獲得し、イングランド代表MFアレックス・オックスレイド=チェンバレンが蹴ったボールがクリアされたこぼれ球に、エリア外から詰めたチアゴが右足一閃。バックスピンがかかったボールがライジング軌道で地を這うようにゴール右隅に吸い込まれた。
https://twitter.com/ChampionsLeague/status/1464184347418935317
【引用:CL公式Twitter】
バルセロナ・バイエルン・リバプールで魅せたピックアップスーパープレー集。
リバプールでは前線のエジプト代表FWモハメド・サラーが走り込むスペースへのパスが多く見られ、このホットラインで作り出されるチャンスが今後も多く見られるだろう。
https://twitter.com/ChampionsLeague/status/1381203531999412224
【引用:CL公式Twitter】
父親のブラジル代表にも選出されていたマジーニョがセリエAのクラブでプレーしていた時に誕生したため、出身はイタリアのバーリ。弟はバルセロナでも共にプレーしていたブラジル代表MFラフィーニャことラファエル・アルカンタラ。従兄弟には現在リーズ・ユナイテッドに所属するスペイン人FWロドリゴ・モレノがいる。5歳の時に父親の母国ブラジルのフラメンゴの下部組織に入団。2005年にバルセロナの下部組織(カンテラ)に入団。その後、当時バルセロナBの監督をしていたグアルディオラに見出され、そのグアルディオラがバルセロナのトップチーム監督となると、2009年5月17日、マジョルカ戦で63分に元アイスランド代表FWエイドゥル・グジョンセンと代わってトップチームデビューを果たす。2011-12シーズンにトップチームへ昇格し、当時不動の地位を築いていた元スペイン代表MFシャビ・エルナンデスや同MFアンドレス・イニエスタの後継者として期待されていた。
2013-14シーズンに出場機会を求めてドイツのバイエルンに移籍。そこで当時監督をしていたのが恩師グアルディオラである。在籍時はケガで離脱している期間以外は常に主力として多くの試合に出場し、多くのタイトルを獲得。2019-20シーズンには、ブンデスリーガ・DFLポカール・UEFAチャンピオンズリーグの3冠にも貢献した。
2020-21シーズンに新たなチャレンジとして日本代表MF南野拓実も所属するイングランドのリバプールへ移籍。2020年9月20日、移籍から2日後の第2節のチェルシーFC戦で後半開始からヘンダーソンに代わって途中出場で早速デビューを果たした。データ分析会社「オプタ」のデータによると、後半の45分間でパス成功75本を記録した。これはチェルシーの全選手よりも多い数字であり、45分間でのパス本数としてプレミアリーグ歴代最多記録を打ち出した。
国別代表としては、父がプレーしたブラジル代表ではなく、育ちの故郷であるスペイン代表を選択した。2011年8月に出身のイタリア・バーリで行われたイタリア戦でA代表デビューを飾った。その後、ケガが無い限りはコンスタントにA代表に選出されている。
2022年2月27日に開催されたリバプールvsチェルシーのカラバオ杯決勝で、チアゴは先発メンバーに名を連ねていたが、試合直前のウォーミングアップ中に負傷してしまい、急遽離脱することに。キックオフをベンチから眺めることになったチアゴは、頭を抱えながら号泣する姿がカメラに捉えられていた。キャリアを通して、数えきれないほど決勝やトロフィー獲得の経験を積んでいるチアゴだけに、冷静さを保っているかと思いきや、涙を流すほどの悔しさを示したことで、決勝や優勝に対するチアゴの熱意や野心が伝わる光景だったとして国内外のメディアでも反響を呼んでいた。
現代の2大監督として名高いグアルディオラとクロップの2人から、その存在を求められ、バルセロナ→バイエルン→リバプールとビッグクラブに所属し続け、質の高いプレーを見せてきたチアゴ。これまで獲得してきたタイトルの多さが存在の重要性と貢献度を表していると言えよう。現在は、高いフィジカルやインテンシティを求められるリバプールの中で、これまでのスカッドではあまり見られなかった創造性の高いプレーで多くの観客を魅了していくであろう。