ここ数年の移籍市場において、ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズに所属していたポルトガル代表MFルベン・ネヴェスの名をが注目の的になっていた。マンチェスター・ユナイテッドやアーセナル、マンチェスター・シティ、リバプール等、名だたるビッグクラブが彼をスカウティングしているとも言われていた中で、サウジアラビア強豪アル・ヒラルへの移籍を決断。そんなルベン・ネヴェスのプレースタイルやスーパープレー、これまでのキャリア等をこの記事では紹介していく。
生年月日 | 1997年3月13日 |
国籍 | ポルトガル |
所属クラブ | アル・ヒラル |
ポジション | MF |
身長 | 183cm |
利き足 | 右足 |
経歴 | FCポルト→ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFC→アル・ヒラル |
ウルブスでは、アンカーやダブルボランチの一角として、高いキック精度を活かしたボールの配給や、豊富な運動量による守備の貢献をメインタスクとしている。ロングレンジのパスを得意としており、カウンター時や、低い位置からの組み立て時には一本のパスで局面を打開できるスキルを持っている。また、ペナルティーエリア外からのミドルシュートも持ち味のひとつである。敵陣深くへ攻め込んだ際の相手のクリアボールを拾ってからや、マイナスの折り返しを受けてから、相手GKの手の届かないコースへ強烈なシュートを狙い澄まして蹴ることができる。ミドルシュートを決めてからの右手人差し指をこめかみ付近に当てる彼特有のゴールパフォーマンスは度々見る光景である。
プレミアリーグでは格上のチームが相手となると、ボールを持たれることが多くなってしまう。だが、ルベン・ネヴェスは、その豊富な運動量で守備に貢献することができ、さらにポジティブトランジション時には高精度のロングパスを供給できる。また、ペナルティーエリア外からの強烈で正確なミドルシュートでのスーパーゴールを決めるスキルも持ち合わせている。プレミアリーグを戦うウルブスにおいて、これが可能なルベン・ネヴェスは重要な選手であったことは間違いない。
ルベン・ネヴェスが得意としているミドルシュートとチームのキッカーを務めるフリーキックでのシュートでのゴール集。ペナルティーエリア外からのミドルシュートは豪快でありながらもコースをしっかり狙うコントロール性にも長けている。正確なキックを蹴ることができるインサイドキックにおいても、力強いインパクトによって強烈なシュートが生み出されているのである。
2019年1月19日に行われたプレミアリーグのレスター戦での正確なロングパス。相手のクロスのクリアを拾ったルベン・ネヴェスはポジティブトランジションで敵陣深くのスペースへ走り込む現リバプール所属FWディオゴ・ジョタをルックアップで確認。ボールを蹴りやすい位置に置くと、ジョタの走り込むスペースにピタリと合ったロングパスを供給。彼のキック精度が活きた場面であった。
ポルトガルのモゼロス出身のルベン・ネヴェスは2005年からFCポルトの下部組織に所属し、年代別の代表に選ばれる等、その実力が評価されていた。2014年からポルトのトップチームに昇格すると、コンスタントに公式戦に出場。2015年10月20日に行われた、UEFAチャンピオンズリーグのマッカビ・テルアビブFC戦では、若くしてキャプテンマークを巻いてプレーした。これによって、2006年にCSKAモスクワの元ロシア代表GKイゴール・アキンフェエフが持っていた20歳217日でのチャンピオンシップにおいてのキャプテンマーク最年少記録を18歳221日に更新した。
ポルトでの活躍から、マンチェスター・ユナイテッドやマンチェスター・シティなどのビッグクラブへの移籍も噂されていたが、2017年夏に当時イングランドの2部リーグであるチャンピオンシップに所属していたウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ(愛称:ウルブス)へ移籍した。移籍金は公表されていないが、当時のウルブスのクラブレコード、またチャンピオンシップ所属チームとしての歴代最高額となる1580万ポンドと推測されている。チャンピオンズリーグへ出場していたポルトから、イングランドの2部リーグ所属のウルブスへの移籍は当時「最も奇妙な移籍」とされた。
レギュラー争いが避けられないビッグクラブではなく、出場機会が多く見込めるクラブへの移籍を選んだルベン・ネヴェスはその狙い通り、ウルブス1年目からレギュラーに定着し多くの試合に出場。その年のチャンピオンシップのベストイレブンに選ばれる活躍を見せ、チームもイングランド1部のプレミアリーグに昇格を果たした。プレミアリーグ挑戦となった2018-19シーズン以降もレギュラーの座を確立し、躍進を見せるウルブスに欠かせない選手として出場を続けている。
ポルトガルのA代表には2015年11月に初招集され、ロシア戦にてA代表初出場を果たしている。次戦のルクセンブルク戦ではスタメンとして出場。2018年のFIFAワールドカップのロシア大会では代表選考から外れてしまったが、それ以降はコンスタントに招集されており、2018-19のUEFAネーションズリーグ優勝に貢献するなど、主力級のMFとして出場している。
ビッグクラブ移籍が濃厚とされていた中、4700万ポンド(約85億円)でサウジアラビア1部アル・ヒラルへの移籍が2023年6月に発表された。
2017年夏にポルトからウルブスに移籍したルベン・ネヴェスだが、この移籍は前述のキャリアでも書いた通り、当時「最も奇妙な移籍」とされた。なぜステップアップとされる移籍が当時チャンピオンシップに所属するウルブスだったのか。この移籍にはポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドを筆頭に、ポルトガル人の一流選手を多く顧客に持つ代理人として有名で、ルベン・ネヴェスの代理人も務めるジョルジュ・メンデス氏の存在が影響していると言われている。同氏はウルブスが中国の新オーナーに買収されることにアドバイザーとして大きく関わっており、当時新監督となったヌーノ・サントの代理人も務めている。メンデス氏はウルブスの選手補強に大きく関与しており、自身の顧客選手をウルブスに集め、またそこからのステップアップ移籍での売却益を生み出すシステムを構築しているとも言われている。事実、ウルブスにはGKジョゼ・サー、MFジョアン・モウティーニョ、FWディオゴ・ジョタなど、多くのポルトガル人が在籍していて、2020年にジョタは高額の移籍金をウルブスに残してリバプールへと移籍している。
豊富な運動量でチームの守備に貢献し、攻撃面では局面を打開できるロングパス、強烈でコースを狙って放たれるミドルシュートを繰り出す。プレミア屈指の中盤選手として頭角を現してきた最中、26歳の若さでサウジアラビアへの移籍が決まり、キャリアのピークを迎える段階で欧州トップリーグから離脱することになった。
サッカーファンとしては非常に惜しい決断に思われるが、C・ロナウドやベンゼマといったワールドクラスのタレントが集結し始めているサウジアラビアでどのような存在感を示すのか注目だ。