カタールW杯も、いよいよ終焉を迎えようとしている。前回王者の貫禄を示したフランスや、FWリオネル・メッシの“ラストダンス”で団結感を見せたアルゼンチンなどが注目ポイントとなった一方、下剋上やサプライズも際立った大会となった。
それは逆に言えば、期待ハズレな成績に終わったチームも数多くいるということだ。本記事では、期待されながらも応えることができなかった“がっかりワーストイレブン”を筆者独自の視点で選出した。
(text by Tate Masa)
国民の期待を背負いながら、「がっかり」な結果に終わってしまった選手・監督は誰だったのか?筆者独自の視点から、がっかりイレブンと監督を選出していく。選出基準は、グループステージにて敗退したチームとベスト8までで敗退したチームの全28チームからとする。その中でも大きな期待を背負いながら活躍・貢献することが出来なかった選手を各ポジションから合わせて11名選出する。また、同じく期待されながら残念な結果となった監督も1名選出する。
また、選出されたメンバーはどうしても攻撃的な選手が多くなったため、今回のフォーメーションは、4人のアタッカーを並べる攻撃的な3-5-2システムを採用した。
筆者の視点で選出した“がっかりワーストイレブン”をご覧いただきたい。
チームの大黒柱であるMFデ・ブライネから「僕らは年を取り過ぎている」発言をされてしまうほど、チームの世代交代が大失敗となっているベルギー代表。その結果としてのグループステージ敗退。原因は、過去の実績を優先してメンバー選出を実施したロベルト・マルティネス監督である。レアル・マドリードで出場機会のないMFエデン・アザールをなぜかエースとして起用し、ブライトンで大活躍中のFWレアンドロ・トロサールをベンチに追いやる始末。CBとして起用したDFトビー・アルデルヴェイレルトとDFヤン・フェルトンゲンは33歳と35歳である。ここぞで出てくるFWドリース・メルテンスも35歳である。他に選出すべき選手はいたのではないだろうか。
今大会のシモンはスペインのパスサッカーに自らが翻弄されてしまったとも言えよう。終始繋ぎの部分でのミスが目立ち、日本戦では後半始まってすぐの自らのパスミスにより、簡単にショートカウンターを受け、MF堂安律の同点ゴールを許してしまった。対戦相手からはGKへボールが戻った際にはプレッシャーをかけるべきと判断され、相手FWから猛然とプレスを受けてしまう始末であった。ベスト16のモロッコ戦では相手GKは全てのPKを止めたが、シモンが止めたのは1本のみとなった。
シュロッターベックのバッドハイライトはグループステージ第1戦の日本戦でFW浅野拓磨のロングボールからの単独ゴールを最も簡単に許したことであろう。自分よりもフィジカルで劣る相手に対して、ファールでも止められなかったあの対応は、ドイツ国民からもクエスチョンが出ている。その後の試合ではスタメンから外され、第2戦のスペイン戦では途中からの出場はあったが、最終的に第3戦では出番無しに終わり、監督からの信頼を失ったと考えるのが普通となってしまった。
ACミランに所属するケアーは、デンマークのDFの中心として考えられていた。第1戦のチュニジア戦ではチームのキャプテンマークを巻き、3バックの中央でスタメン出場したが、やはり大会前から抱えていた膝の怪我のコンディションが整っておらず、65分に途中交代でピッチを退いた。残りの2戦も出場出来る状態ではなかったようで、試合には出ることなく、タレント揃いで期待されていたデンマーク代表はグループステージ敗退で終わった。
所属チームであるナポリにて大活躍を見せ、FWソン・フンミンと並んで韓国代表の柱として期待されて臨んだ今大会。結果としては、ガーナ代表に2失点、ブラジル代表には4失点と、守備を安定させることは出来ず、期待に応えることは出来なかった。グループステージ第1戦のウルグアイ戦にて負ったケガに耐えながらの出場を続けていたが、後半の途中からはあからさまに足が止まっている光景が目立ち、最後には足が攣っていることが多かった印象であった。グループステージ突破は出来たものの、ベスト16でブラジル代表に前半だけで大量失点という苦しい結果で敗退となった。
開催国カタールのキャプテンとして出場した今大会は、カタールにとって苦い思い出となったであろう。第1戦のエクアドル戦ではカタール代表の選手全員が浮き足立っており、安易なミスを連発。デュエルにも全く勝てずという内容だった。その状況下でチームメンバーを鼓舞しないといけないキャプテンであるにも関わらず、周りに影響され自らも浮き足立っていたアルハイドスは見るに耐えなかった。
マンチェスター・ユナイテッドでの好調を見せ、W杯でもデンマーク代表の中心として攻撃を引っ張ることが期待されたエリクセン。デンマーク代表は他にもタレントを揃えており、2021年のEUROではベスト4まで進んだことから、今大会は良いところまで勝ち進むことが予想されていたが、蓋を開けてみればグループステージでは1勝も出来ずに敗退となった。自身もアシストを決めることが出来ず、司令塔としての活躍を見せることは無く、今大会を早々に去ることとなった。
W杯前に英紙「ガーディアン」に語ったとされる、「僕らは年を取り過ぎている」発言が物議をかもしたデ・ブライネ。名実ともにチームを引っ張る必要がある選手からのこういった発言は、チームの士気を下げたに違いない。FIFAランク2位と、優勝候補だったベルギーは、まさかのグループステージ敗退となり、大きな期待を大きな失望へと変化させた。
FWルイス・スアレス、FWエディンソン・カバーニといった、かつての2大巨頭がベテランとなり、新たなエースとして期待されていたヌニェスだったが、結果はノーゴール。ウルグアイ代表もグループステージ敗退で大会を去ることとなった。決定機も幾度となく外し、新たなウルグアイのエースとして君臨するためのアピールは大失敗に終わってしまった。
ウェールズ代表のエースであり、大黒柱として出場した今大会。最終的にはアメリカ戦でのPKによる1得点のみで大会を去ることとなったベイル。全盛期のスピードやキックは鳴りを潜め、バトル・オブ・ブリテンではイングランドに対して全く良いところを出せずに終わったという印象である。過去のベイルにはボールを持った時に「怖さ」を感じたが、今大会のベイルからはそれが全く感じ取れなかった。かつての怪物FWの姿は、もうここには無かった。
自身最後のW杯として、悲願のタイトル獲得を目指したC・ロナウドであったが、ベスト8で敗退となった。5大会連続ゴールを決めたものの、それはPKによる得点であった。流れの中からの得点は無く、C・ロナウドにボールが入るとボールポゼッションの流れが悪くなり、ボールロストをするシーンも目立った。決勝トーナメントからはスタメンから外れ、監督との衝突疑惑がメディアにて発信されてしまうなど、チームの和を乱す取り上げ方もされてしまうなど、今大会のC・ロナウドは散々な出来だったと言わざるを得ないだろう。
今大会のルカクは、ゴールを取れない薬でも打たれたのかというほど、決定機を外し続けた。シュートのほとんどが枠外に飛んでいき、ポストにまで嫌われ続けるその様は、まるで相手チームのスパイかと思われるほどであった。大会前に左太もものハムストリングを痛め、コンディション不良の中で強行出場したが、結果としてチームのお荷物となって大会から送り返されることとなった。
今回のカタールW杯におけるがっかりワーストイレブン&監督は以下の通りとなった。
期待が大きかった国や選手からの選出が多くなっているが、期待しているからこそ、それに応えられなかった時の「がっかり」もまた、大きくなるのである。