ついに11月20日から、4年に1回のサッカーの祭典、2022FIFAワールドカップカタール大会が開幕する。例年であれば夏の時期にW杯は開催されていたため、早く始まってほしいと待ち焦がれていたサッカーファンも少なくないだろう。
W杯の楽しみの1つに、本大会で活躍しブレイクする若手選手の発見と、そのプレーを見ること、またその選手のW杯後の去就がある。毎回のように、国際的な知名度としてはもう一息の若手有望選手が大活躍を見せ、大会後に知名度の大幅向上と、キャリアをステップアップさせるといった流れがある。今年のカタールW杯ではどの選手がこの流れに乗ることが出来るのかを予想しながら試合を観ることもサッカーファンにとっての有意義な着眼点であると言える。
この記事では開催間近のカタールW杯において、ブレイク候補として挙げられる選手を予想、ピックアップし、その選手の特徴とブレイク候補となり得る理由を紹介していく。
(text by Tate Masa)
過去3大会でのW杯ブレイク選手の振り返り
今年のカタール大会でのブレイク候補を予想する前に、まずは過去に開催された大会ではどの選手がブレイクしたのかを振り返っていこう。2018年のロシア大会、2014年のブラジル大会、2010年の南アフリカ大会の3大会を振り返っていく。この過去3大会の「最優秀若手選手賞」を受賞した選手を挙げ、どのような活躍を見せたのか、また、大会後の経歴を紹介していく。
トーマス・ミュラー(ドイツ代表/2010年南アフリカ大会)
2010年の南アフリカ大会での「最優秀若手選手賞」の受賞選手は、ドイツ代表MFトーマス・ミュラーだった。当時弱冠20歳ながら、優れた得点感覚と抜群のオフ・ザ・ボールの動き出しで、すでにドイツの名門FCバイエルン・ミュンヘンでレギュラーの座を掴んでいたミュラーは、当時のヨアヒム・レーヴ監督の信頼を勝ち取り、全7試合中、6試合でスタメン出場し、大会得点王となる5ゴールを決める大活躍を見せた。惜しくもチームはミュラーが累積警告で出場出来なかった準決勝でスペインに0-1で敗れたが、もしミュラーが出場していれば決勝に駒を進めていた可能性は否定出来ないであろう。
大会後のミュラーはその後もバイエルン一筋で中心選手としてレギュラーの座に君臨し続け、バイエルン歴代3位の得点記録保持者となるまでに至っている。また、ドイツ代表としての出場数は118試合で歴代5位、得点記録は44得点で歴代7位(2022年11月7日時点)となっており、今カタール大会にてさらにこの記録を伸ばしていくこととなるだろう。
ポール・ポグバ(フランス代表/2014年ブラジル大会)
2014年のブラジル大会での「最優秀若手選手賞」の受賞選手は、フランス代表MFポール・ポグバだった。フランス代表は準々決勝でドイツ代表に0-1で敗れ、ベスト8という結果で終わり、また、得点数も1ゴールと多くはなかったMFのポグバがこの賞を受賞したことは、そのプレーのクオリティとインパクトが素晴らしかったことの証明であろう。2-0で勝利した決勝トーナメント1回戦のナイジェリア戦では、その試合のマンオブザマッチに選出されている。
当時からイタリアの名門ユベントスFCでレギュラーとして出場していたポグバだったが、このブラジル大会から一気に知名度と市場価値を高め、2016年8月8日には自身をフリートランスファーで放出した、古巣であるマンチェスター・ユナイテッドFCへ、当時移籍金としては最高額の1億1,000万ユーロで再獲得させるまでの選手となった。
キリアン・ムバッペ(フランス代表/2018年ロシア大会)
2018年のロシア大会での「最優秀若手選手賞」の受賞選手は、フランス代表FWキリアン・ムバッペだった。この大会で優勝したフランス代表の中で、同代表FWアントワーヌ・グリーズマンとともに、一際の活躍を見せたのが当時まだ19歳だったムバッペである。世界に衝撃を与えた圧倒的なスピードを見せつけ、7試合出場で4得点。決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン戦では2得点の活躍でマンオブザマッチにも選ばれた。4-2で勝利した決勝のクロアチア戦でも相手の息の根を止める4得点目を決め、優勝に大きく貢献した。
ムバッペはパリ・サンジェルマンFCとの大型契約を結ぶなど、ロシア大会前から脅威の19歳として知名度も抜群であった。そして、W杯という大きな国際大会で、臆することなくしっかりと結果を出したことから、その才能が本物であることを自ら証明してみせた。
カタールW杯でのブレイク候補選手を紹介
ここまで、過去3大会での「最優秀若手選手賞」の受賞者を紹介してきた。さて、今年のカタールW杯ではどの選手が大きな活躍を見せ、ブレイクするのだろうか。ここからは、今大会でのブレイク候補となる選手を筆者の予想から3名ピックアップし、その選手の特徴とブレイク候補となり得る理由を紹介していこう。
レアンドロ・トロサール(ベルギー代表)
まず1人目に挙げるのは、イングランドのプレミアリーグに所属するブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCで今シーズン目覚ましい活躍を見せているベルギー代表FWのトロサールである。左WGが本職のウインガーであるトロサールは、足元の技術に長けており、ドリブル突破やラストパスが持ち味の選手である。グレアム・ポッター監督(現チェルシーFC監督)政権時には左のWBでの出場も多く、守備時における献身性も磨かれた。今シーズンは本職のWGポジションや、1トップでの起用もあり、得点力を爆発させており、第9節のリバプール戦ではハットトリックの活躍を見せるなど、13試合で7ゴールを上げている(11月7日時点)。
プレミアリーグでの活躍もあり、トロサールはベルギー代表のスタメンとして出場するチャンスはあると考える。ライバルとなる選手はレアル・マドリード所属のFWエデン・アザールであるが、クラブでの活躍はトロサールに軍配が上がるであろう。また、同代表が3バックシステムを採用しており、ポッター監督が起用していたように、左のWGに攻撃的で献身性もある彼を起用するのも非常に良いと考える。
試合に出場した際にはチームメイトのMFケビン・デ・ブライネから裏のスペースへ配給されるボールを受け取ったトロサールが、ゴールめがけて仕掛ける場面が見られるであろう。
三笘薫(日本代表)
2人目に挙げるのは、こちらもトロサールと同じくブライトンに所属し、日本代表でも活躍が期待される三笘薫である。三笘の持ち味はなんと言ってもドリブル突破である。主戦場となる左サイドから相手DFと1対1になると必ずドリブルで仕掛け、ペナルティエリアへの侵入を試みる。ドリブル時の姿勢が良いため、縦への突破もしくは中央への切り込みを相手DFの対応を見ながら使い分けることが出来る。
ポッター監督がチェルシーに引き抜かれ、ロベルト・デ・ゼルビがブライトンの監督に就任すると、三笘は出場機会を増やし、先発での出場も多くなってきた。プレミアリーグ第15節のウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦では前節に続いて先発出場し、自身リーグ戦初得点となるゴールを決めた。
体調不良により、コンディション調整が難しい状態であるが、試合に出場した際にはその個の力で日本代表を勝利に導くことが出来るのかが注目である。
ジュード・ベリンガム(イングランド代表)
最後に挙げるのは、ドイツ・ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントに所属する、イングランド代表MFベリンガムである。イングランド人MF伝統のボックス・トゥ・ボックスタイプの中盤選手であるベリンガムは、パスやドリブルで攻撃の起点になることや自ら相手ペナルティエリアへ飛び込んでのフィニッシャーになることでチームの攻撃を牽引し、また、長い手足を活かしたインターセプトやタックルでチームの守備の厚みを増す。まさにオールラウンダーという言葉がピッタリな選手である。
イングランド代表のMFでは、これまでスタメンとして出場していたマンチェスター・シティFCのカルバン・フィリップスが怪我の影響により、チームではしばらく試合に出場していなかったため、ドルトムントで活躍中のベリンガムがスタメンの座を得る可能性も高い。
前回のロシア大会での4位を超えることが出来るかどうかはベルンガムのパフォーマンスによっても影響してくるであろう。今大会大注目の19歳である。
まとめ
カタール大会のブレイク候補選手一覧
- レアンドロ・トロサール(ベルギー代表)
- 三笘薫(日本代表)
- ジュード・ベリンガム(イングランド代表)
本記事ではこの3選手を今大会のブレイク候補として挙げた。もちろん他にもブレイク候補として挙げられる選手はいるが、今回はこの3名をピックアップさせていただいた。今大会の活躍次第では、多くのビッグクラブからの視線が集まり、冬の移籍にてステップアップするパターンも起こり得るかもしれない。皆さんも今大会のブレイク候補を考えて、その選手に注目してW杯を楽しんでみてはいかがでしょうか。