【W杯】ブラジル代表の“特長”と“懸念点”は?城福浩が解説

カタールW杯開催に際し、「Off The Ball」では各優勝国候補の特長と懸念点を、東京ヴェルディで指揮官を務める城福浩氏が独自の視点で解説する特集を組む。今回は、ブラジル代表にスポットライトを当てる。

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ブラジル代表のカタールW杯での成績

対戦カードスコア得点者
vs セルビア代表2-0リシャルリソン ×2
vs スイス代表1-0カゼミーロ
vs カメルーン代表0-1
vs 韓国代表4-1ヴィニシウス ネイマール リシャルリソン パケタ
vsクロアチア1-1(PK:2-4)ネイマール

今大会のブラジル代表は「最も充実したメンバー」

※当記事のインタビューは2022年11月17日に実施したものです。

2002年の日韓大会以来、優勝から遠ざかっているブラジルだが、今大会の代表チームは直近4大会と比較してもトップクラスの陣容と言える。各ポジションにワールドクラスが揃っており、死角がない。

城福 浩

どのポジションにも穴がないだけでなく、GKをはじめ、全てのポジションに強力なオプションを持っている。セレソンとしては、ここ何回か戦ってきたW杯で最も充実したメンバーと言えるかもしれない。通常、これだけ選手層が厚ければ、マネジメントが難しく、内部から不満が噴出することも懸念されるもの。そのため、チッチ監督の気配り、束ねる手腕も、今のブラジルのストロングポイントと評価することができる。

ブラジル代表は他国に比べて負傷者も少ない

また、今大会はこれまでとは異なり11月〜12月に実施されているため、欧州リーグのシーズン途中での開催ということもあり、かつてないほどの負傷者が続出している。多くの優勝国候補で主力の離脱が相次ぎ、万全なスカッドで大会に臨むチームがほとんどない。しかし、ブラジルはその点、運にも恵まれている。

城福 浩

カタールW杯は、どれだけ負傷者を出さずに大会を迎えられるかというのが、とりわけ重要な指標となる。セレソンはただでさえ大会最高レベルの選手層を誇っている中で、各ポジションの負傷離脱がほとんどないと言っていい。絶対に欠けてはならない選手が全員、万全なコンディションで大会を迎えている。セレソンにとっては、王者奪還に向けてこれ以上ない環境で臨むことができる。間違いなく、優勝候補の筆頭はブラジルだろう。

“ネイマール対策”の解決策を見出したブラジル代表

直近4大会のいずれも、ブラジルの期待値が非常に高く、優勝候補の筆頭に挙げられていた。グループリーグは難なく突破する一方、決勝トーナメントで優勝候補と対戦する際は、それまでの勢いが嘘かのように停滞し、敗退するケースも目立っていた。

そこには対戦相手の“王様”ネイマールへの対策もあった。最終的にはネイマールにボールを預ける。そういったブラジルの潜在意識を見抜かれ、ボールの奪い所とされることも多かった。しかし、今大会には、頼れるヤングスターがいる。

城福 浩

世界屈指のドリブラーに成長を遂げているヴィニシウスの存在は大きい。近年のセレソンではネイマールが絶対的存在として君臨していたが故に、ネイマールを意識しすぎる状況がピッチで垣間見え、それが時として諸刃の剣となっていた。しかし今のセレソンにはヴィニシウスもいる。彼の存在によって、ネイマールのエゴイストの面が良い意味で削れることになり、相手からしてみたら、抑えどころが定められなくなる。この二人の適度なお互いのリスペクトが左サイドを制圧することに繋がる。

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懸念点は決勝トーナメント進出後のリシャルリソン

抜け目のないブラジルではあるが、チッチ監督の計算が立たないポイントを挙げるとすれば、現在センターFWとして主力に定着しているリシャルリソンの存在かもしれない。ストライカーとしての素質は申し分ないが、際立った存在感を発揮する試合もあれば、大半の時間で消えてしまう試合もあり、安定性には若干ムラがある。そして、やや気が荒い一面もある。

城福 浩

ほぼ欠点のないメンバー構成だが、あえて懸念点を指摘するなら、リシャルリソンになるのかな。彼は抜群の得点能力を備えていて、フィジカル・スピード・技術、あらゆる面で今大会トップクラスなのは間違いない。ただ、メンタル面に少し難のある印象。勢いに乗った試合はゴールを量産することができる一方で、対戦相手が強豪国で、何もできない時間が多くなってしまった時に、気が立って、荒いプレーや不要なタックルで悪目立ちするケースも少なくない。なので、リシャルリソンの真価が問われるのは、決勝トーナメントでの戦いになるのではないだろうか。

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ブラジル代表の“特長”と“懸念点”のまとめ

ブラジル代表はカタールW杯において優勝候補の一角と評価されている中、城福浩氏は特長と懸念点をそれぞれ独自の視点で、下記のような形で解説した。

  1. 過去4大会と比較しても最も充実したメンバー
  2. 他の優勝国候補と比較しても負傷者が少ない
  3. 過去に苦しんだ“ネイマール対策”の解決策となるヴィニシウスの存在
  1. 難しい試合を強いられた際、リシャルリソンが時折見せる気の立ったプレーや悪目立ち
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当記事のインタビュイー

城福浩のプロフィール

U-17日本代表 監督…AFC U-17選手権優勝

FC東京 監督…ナビスコ杯優勝

ヴァンフォーレ甲府 監督…J2優勝

サンフレッチェ広島 監督…J1リーグ2位

東京ヴェルディ 監督…2022年〜現在

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ジョータツ

「Off The Ball」編集長。 大手サッカー専門メディアに過去6年配属。 在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。 「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。 人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。 趣味はサウナ。