【W杯】アルゼンチン代表の“特長”と“懸念点”は?城福浩が解説

カタールW杯開催に際し、「Off The Ball」では各優勝国候補の特長と懸念点を、東京ヴェルディで指揮官を務める城福浩氏が独自の視点で解説する特集を組む。今回は、アルゼンチン代表にスポットライトを当てる。

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アルゼンチン代表のカタールW杯での成績

対戦カードスコア得点者
vs サウジアラビア代表1-2メッシ
vs メキシコ代表2-0メッシ エンソ・フェルナンデス
vs ポーランド代表2-0アリスター アルバレス
vs オーストラリア代表2-1メッシ アルバレス
vs オランダ代表2-2(PK:4-3)モリーナ メッシ
vs クロアチア代表3-0メッシ アルバレス×2

36戦無敗でW杯を迎えた堅守アルゼンチン代表

※当記事のインタビューは2022年11月17日に実施したものです。

まずアルゼンチンで特筆すべきは、直近36試合で無敗であるということだ。歴代のアルゼンチンは得点力が高い一方、失点も重ねる傾向にあったが、今大会に臨むアルゼンチンは、これまでとは毛色が異なるチームと言っていい。

城福 浩

36試合無敗ということは、2019年7月のブラジル戦以降の約3年4ヶ月、黒星を喫していないということ。これは驚異的な成績と言える。試合に負けないという習慣。もはや負けない文化と言ってもいいかもしれないが、チームに根付いている。これは言うまでもなく、カップ戦の舞台で最も重要な要素だ。そして、その36試合のうち、22試合がクリーンシート。アルゼンチン史上最も堅守なチームと言うことができるだろう。

「メッシにとって最後のチャンス」という一体感

そして、FWリオネル・メッシに触れないわけにはいかないだろう。今年で35歳となり、メッシにとっては最後のW杯となる可能性が高い。少なからず、主力としてプレーする“ラストダンス”となることだろう。そして、アルゼンチンの国全体が、そのことを承知している。闘志が燃えないわけがない。そんな舞台が整っている。

城福 浩

優勝候補と目されている国には、多かれ少なかれ特別な選手がいる。その中でも特別なのが、やはりメッシ。バロンドールを7回受賞という前人未到の実績を打ち立てたメッシが、唯一掲げていないトロフィーがW杯であり、年齢的に彼にとってラストチャンスとなる可能性が高い。それを、チームメイト、スタッフ、国民の誰もが理解しているのが今大会だ。これは大きなアドバンテージとなりえる。

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バロンドールの選考外はメッシにとって好材料に?

アルゼンチンは、2014年のブラジル大会では準優勝に輝いたものの、2018年のブラジル大会でベスト16と早期敗退を喫している。しかし、どちらの大会でも共通していたのは、メッシ以外にもワールドクラスと評価される選手が数多く名を連ねていた。

そしてメッシ自身も、その2大会は世界No.1の選手として君臨していた時代だった。だが、2022年はバロンドール候補者30名のリストから漏れることに。それは、この17年間の1度もなかったことだ。ついにピークを過ぎた。そういった空気がサッカー界に広がったが、城福浩氏はリストから外れたことがメッシにとって好材料となる可能性を指摘している。

城福 浩

前々回、前回の大会の方が、選手のクオリティー、また選手層の充実度は高かったかもしれない。その間も、メッシは長きにわたってバルセロナで、文字通り世界最高の選手として偉業を達成し続けていた。しかし、時が過ぎ、今年はバロンドールのノミネート30名からも外れることに。しかし、彼自身にとっては肩の荷が下りたのかもしれない。今季はこれまで以上にリラックスしてプレーしている印象を受け、実際、PSGでゴールもアシストも量産している。

個の打開力で劣勢も“理論”を超えるメッシへの忠誠心

メッシは今季公式戦19試合で12ゴール14アシストを記録しており、まるで全盛期のような姿を披露している。無意識にも重圧となっていた“バロンドールの呪縛”から解放されたということなのかもしれない。

一方、今回の招集メンバーは、過去の大会に比べると、タレント揃いというわけではない。そのため、個の打開力に関しては、他の優勝国候補に劣ると言わざるをえない。しかし、最後にメッシにW杯のトロフィーを掲げさせたい。そういった想いはこれまでで最も強いはずだ。直近36試合で無敗というのは、単なる偶然で成し遂げられる功績ではない。

城福 浩

今回の代表メンバーは、個の力で流れを変えることのできる選手は少ない印象。試合が膠着状態になると、分が悪くなる可能性は否めない。しかし、メッシのために心の底からハードワークを厭わない集団ではある。もちろん、サッカーはもっと理論的なものでありテクニカルでタクティカルなものである。しかし、世界の主要クラブで日々戦っている選手たちであっても、心の持ち様や覚悟の度合いというものがチームプレーに影響を及ぼすものだ。メンタルが勝利を決定づける大きな要因であることを証明する大会になる可能性がある。

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アルゼンチン代表の“特長”と“懸念点”のまとめ

アルゼンチン代表はカタールW杯において優勝候補の一角と評価されている中、城福浩氏は特長と懸念点をそれぞれ独自の視点で、下記のような形で解説した。

  1. W杯前の36戦で無敗、22戦で無失点と際立った堅守
  2. “バロンドールの呪縛”から解放されたメッシの好調ぶり
  3. 「最後にメッシにW杯トロフィーを」の一体感
  1. 個の打開力は他の優勝国候補と比べて劣勢
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当記事のインタビュイー

城福浩のプロフィール

U-17日本代表 監督…AFC U-17選手権優勝

FC東京 監督…ナビスコ杯優勝

ヴァンフォーレ甲府 監督…J2優勝

サンフレッチェ広島 監督…J1リーグ2位

東京ヴェルディ 監督…2022年〜現在

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ジョータツ

「Off The Ball」編集長。 大手サッカー専門メディアに過去6年配属。 在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。 「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。 人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。 趣味はサウナ。