パリ・サンジェルマン(PSG)は2021-22シーズン、リーグ・アンで2位に勝ち点15差をつける独走で優勝を達成した一方、最優先事項であるUEFAチャンピオンズリーグではベスト16敗退の憂き目に遭った。これにより、クラブはマウリシオ・ポチェッティーノ監督を更迭。絶対的エースであるフランス代表FWキリアン・ムバッペが残留を決断したことが戦力的に好材料となる一方、選手の裁量を超えた条件で新契約を結んだことで、チームのバランスが崩れる可能性も危惧されている。PSGは今後移籍市場でどのような立ち回りを見せるべきなのだろうか?現時点での実現度をあえて鑑みず、「Off The Ball」編集部内で独自の見解を談論した。
ムバッペ残留はPSGにとって“ハイリスクハイリターン”
メンバーだけを見れば、ムバッペの慰留に成功したこともあり、PSGはやはり世界最高のタレント軍団。来季こそ悲願であるCL制覇を狙う目標は明確と言えるでしょうね。
レアル・マドリード移籍が確実視されていたムバッペが、急転直下でPSG残留を果たしたことは、一見すれば大成功に映るだろう。世界で3本の指に入るアタッカーなのだから、確かに残ってくれたのは戦力としてとても大きい。ただ、長い目で見た時、本当にそうだと言えるだろうか。現地報道によると、ムバッペに提示した条件で、選手の補強・放出の決定権や、監督やSDの解任の権限まで譲渡されたと伝えられている。もし事実だとしたら、さすがにやりすぎているのではないだろうか。選手から監督、スタッフまで、全員がムバッペの顔色を窺いながら働くことになる。それを一致団結している状態だと、本当に言えるだろうか。メッシやネイマールは、本音のところでどう思っているのか。ムバッペの新契約が、良い方向に転がるのか、悪い方向に転がるのか、まだ予測がつかない。
PSGにとって最適なディ・マリアの後釜は?
ただ、退団したディ・マリアの後釜は必要でしょうね。左も右もできるタイプが望ましいかなと。左利きであれば、リーズ・ユナイテッドのブラジル代表FWハフィーニャ。右利きであれば、エバートンのブラジル代表FWリシャルリソンはどうでしょうか。リシャルリソンであれば、センターもできますし、最高級のスーパーサブだと思います。いずれにしても、質の高いバックアッパーは欠かせないですね。
※ブラジル代表FWリシャルリソンは2022年7月1日にトッテナムへと完全移籍。
前線の選手は1人欲しいところではあるね。左も右も遜色なくプレーできる選手で言えば、マンチェスター・シティのイングランド代表MFラヒーム・スターリングが理想的かな。あとは、両利きであるバルセロナのフランス代表MFウスマン・デンベレは起爆剤にはなるだろうね。彼はフランス人だし、もしもバルセロナを去るのであれば、PSG移籍は魅力的であるはず。
PSGの最終ラインに新たなディフェンスリーダーは必要?
DFのポジションはどうでしょう?マルキーニョスがいるので、僕は特に補強は必要ないかなと思っているのですが。
自分は逆で、マルキーニョスに負担がかかりすぎているのが、今のPSGの課題でもあるかなと考えている。DFでもう一人、柱となる選手が欲しいところ。そういう意味では、ユベントスのオランダ代表DFマタイス・デ・リフトの獲得レースには参戦するべきだろうね。彼の最終ラインから見せるリーダーシップは、次世代のキャプテンとしても期待できる。マルキーニョスがビルドアップし、デ・リフトがカバーリングするタスクで、相性も良いのではないだろうか。
PSGにとって優先度の高い守備的MFの補強
中盤に関しては、補強すべきなのはチェルシーのフランス代表MFエンゴロ・カンテですかね。現状、ヴェラッティのタスク量が多すぎるので、彼を攻撃に専念させるためにも、相棒としてカンテは適任かなと。チェルシーでも今では絶対的な存在ではなくなっているので、獲得のチャンスはあるはずです。彼もフランス人ですからね。
自分は、PSGが最も獲得に動くべきなのは中盤のポジションだと思っている。現状、4-3-3システムを導入しているが、前線の守備の強度がそこまで高くないことを踏まえると、4-2-3-1システムがいいのではないだろうか。そして、ダブルボランチを組むヴェラッティの相棒として、ウェストハムのイングランド代表MFデクラン・ライスの獲得が叶えば、これ以上の補強はないと思っている。現状、守備的MFとして、世界でも5本の指に入るかもしれない。まだ若く、100億円以上する移籍金で他のクラブは手を出さずにいるが、PSGの資金力であれば、交渉を長引かせることなく、違約金設定額の満額で獲得できるはず。CL出場権を持っていることで、ライスにとっても悪くない選択肢になる。
PSGの中盤に訪れる“世代交代”の時期
PSGの中盤は、現状のスカッドで言えば、ヴェラッティ、ダニーロ・ペレイラ、ゲイェ、レアンドロ・パレデス、ワイナルドゥム、エレーラと、存分にワールドクラスの選手が揃ってはいるんですよね。
その一方で、フレッシュな若手が不足している気もしている。全員、30代に突入しようとしている選手から30代半ばといった選手の年齢層になるが、次世代のチーム構成を考えると、先ほど触れたライスを含め、若手有望株を補強しておくべきではないかなと。4-3-3システムを継続するのであれば、インサイドハーフに1人、クリエイティブな中盤選手が欲しいところ。バルセロナのオランダ代表MFフレンキー・デ・ヨングに退団の意思があるのであれば、獲得にトライするべきではあると思う。もしくは、リールで結果を残しているポルトガル代表MFレナト・サンチェスにも期待できる。
※PSGは2022年7月1日に、ポルトからポルトガル代表MFヴィティーニャの獲得を正式発表。
※PSGは2022年8月5日に、リールからポルトガル代表MFレナト・サンチェスの獲得を正式発表。
PSG夏の補強策のまとめ
2021-22シーズンのPSGは、リーグ・アンでは圧倒的な強さを誇示して優勝を果たした一方、CLではベスト16と早期敗退を強いられることに。クラブはポチェッティーノ監督を解任し、クリストフ・ガルティエ監督を招聘。新体制でチームに変革がもたらされることになるが、今夏の補強候補として、
- ブラジル代表FWハフィーニャ(リーズ・ユナイテッド)
- イングランド代表MFラヒーム・スターリング(マンチェスター・シティ)
- フランス代表MFウスマン・デンベレ(バルセロナ)
- オランダ代表DFマタイス・デ・リフト(ユベントス)
- フランス代表MFエンゴロ・カンテ(チェルシー)
- イングランド代表MFデクラン・ライス(ウェストハム)
- オランダ代表MFフレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)
- ポルトガル代表MFレナト・サンチェス(リール)
上記の名前が挙げられた。来季こそ悲願の欧州制覇を成し遂げることがPSGの最大のミッションになるが、新契約を結んだムバッペ、そして新戦力をまとめあげ、いかにチームを団結させることができるのかがポイントとなりそうだ。