ポグバに「可変KWを与えるのはリスク」 城福浩が語る問題点「監督としては難しい」

城福浩が語るポール・ポグバ
【引用:ポグバ公Twitter & Off The Ball編集部】

フランス代表MFポール・ポグバは、当時のサッカー界における移籍市場最高額となる約120億円で、2016年にユベントスから古巣ユナイテッドへと復帰。しかし、期待されていたほどのパフォーマンスは発揮できず、2022年にはフリートランスファーでユベントスへと帰還した。ユナイテッドとユベントスの往復を繰り返すキャリアを歩んでいるポグバだが、これまで数々のJクラブを指揮し、今季から東京ヴェルディの監督に就任している城福浩氏が、ポグバに対するマネジメントの難解さを語っている。

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ポグバへの可変KWは「エクスキューズに」

ポグバは、状況を打開するサイドチェンジや屈強なフィジカルを活かしたドリブル突破が大きな武器となっている。191cmと恵まれた体格を持った上で、足元のスキルにも長ける、世界で見ても非常に希少価値の高い存在だ。

一方、城福氏はポグバの起用法に関しては、監督目線としては難しさが伴う見解を示している。

城福 浩

ポグバに可変的なキーワードを与えるのはリスクになってしまう。なぜなら、エクスキューズが生じてしまうからだ。彼はネガティブトランディション、ポジティブトランディションの応用に課題を抱えている

果たして、その真意とは…?

ポグバは「本来可変的な役割にうってつけ」

試合の90分間で、攻撃時と守備時にシステムが変動する。このような可変システムは、特に現代サッカーでは主流の戦術の一つである。その一方、可変的なシステムを実行するための、臨機応変にポジションを変動できるマルチな選手は限られてくる。ユナイテッドで言えば、それを卒なくこなすことのできる能力を備えているのが、ポグバだ。

城福 浩

前提として、ポグバは能力が極めて高い。攻撃能力も身体能力も際立っている。守備能力も相当高い。だからこそ、チームとして可変システムで臨む場合、ポグバに『攻撃時はインサイドハーフの立ち位置をとってくれ、守備時はボランチの立ち位置をとってくれ』と要求したくなるし、実際に要求されているのが見て取れる。可変システムを取り入れるならば、ポグバに可変的な役割を務めてもらうのが本来うってつけの存在だからだ。

しかし、現状ユナイテッドでは歯車がうまくはまっていないのは明らか。その原因についても城福氏は言及している。

ポグバの姿勢は「どこか他人事のように映る」

城福 浩

ポグバはインサイドハーフとボランチの可変、最近であれば2トップとインサイドハーフの可変を実行する際のキーマンの役割を託されていることが多い。しかし、その指示を自分都合で受け取ってしまっているのではないだろうか。守備強度や粘り強さも備えているのに、本当にチームがゴールを脅かされる危機に直面しても、ボランチが本来やるべき積極的な帰陣を見せてくれることは少ない。攻撃の指示が頭のどこかに残っていて、守備時にどこか他人事のような姿勢に映る。だからこそ、メンタリティーの面で言うと、監督としては扱いになかなか難しい選手ではあると思う

守備の意識が希薄になった象徴的な失点シーンが第31節レスター戦(1-1)だ。味方が右サイドでボールを奪われカウンターを受けた際、ポグバが自陣で相手ボールホルダーと対峙したものの、体をぶつけるでも足を伸ばすでもなく、ジョギングして並走するだけの対応に終始。余裕を持ったクロスを放り込まれると、相手FWに先制点となるヘディング弾を許した。ポグバが少しでも相手のクロス供給を阻止する姿勢を示せば、あの失点は生まれなかったかもしれない。

ポグバは「短期決戦タイプ」で「課題は精神的持久力」

一方、ポグバはフランス代表では違った表情を見せる。ボランチのパートナーにMFエンゴロ・カンテという圧倒的な“ダイナモ”がいることももちろん大きいが、ポグバ自身も攻守にわたり積極的なハードワークを示している。少なからず、ユナイテッドではあまり見せることのない姿と言える。その点について、城福氏は、「有期限の戦い」と「無期限の戦い」の違いが、ポグバのパフォーマンスに影響していると指摘している。

城福 浩

サッカーは、短期戦と長期戦に区分けされる。短期戦は、W杯やEUROのような1ヶ月前後で完結する短いスパンのトーナメントが該当する。長期戦は、リーグ戦やCLのような1年を通して続く戦いを指す。ポグバは短期決戦で際立ったパフォーマンスを発揮するタイプ。集中力を維持できる期間においては、彼は本当に頼りになる存在。ただ、リーグ戦のような長期戦では、その集中力を持続するのは簡単ではない。長期戦となると、エクスキューズを探し始めてしまう。彼の課題はその精神的持久力にあると思う。そして、その精神的持久力が最も求められる舞台が、今のプレミアリーグだと言える

2018年のW杯優勝にも大きく貢献したポグバは、フランス代表では確固たる地位を築いている。1,2ヶ月という期間で見せる“瞬発力”はワールドクラスである一方、毎月4〜8試合をこなすクラブでの活動では“持続力”が肝となる。とりわけ世界最高峰のプレミアリーグは、攻守において常にトップパフォーマンスを求められるのだ。

ポグバが抱える課題のまとめ

マンチェスター・ユナイテッドのポール・ポグバ
【引用:ポグバ公式Twitter】

屈強なフィジカル、足元のスキル、違いを生み出す打開力でワールドクラスと評価されているポグバだが、ユナイテッドでは思うようなキャリアを描くことができておらず、今夏の退団も取り沙汰されている。W杯やEUROなどの短期決戦では集中したハイパフォーマンスを見せることができるが、1年を通してポジティブトランディション、ネガティブトランディションを絶え間なく繰り返すプレミアリーグの舞台では、“瞬発力”に加えて“持続力”が肝となる。精神的持久力を課題とするポグバに対しては、エクスキューズを生み出さないマネジメントが重要となる。可変システムのキーマンに指名する際、それを実行できる能力だけではなく、実行してくれるメンタリティーまで見極める必要があるということだ。

※ポグバは2021-22シーズンでの退団をマンチェスター・ユナイテッド公式サイトが発表。

当記事のインタビュイー

城福浩のプロフィール

U-17日本代表 監督…AFC U-17選手権優勝

FC東京 監督…ナビスコ杯優勝

ヴァンフォーレ甲府 監督…J2優勝

サンフレッチェ広島 監督…J1リーグ2位

東京ヴェルディ 監督…2022年〜現在

詳しいプロフィールはこちら

城福浩が語るポール・ポグバ

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この記事を書いたライター

「Off The Ball」編集長。
大手サッカー専門メディアに過去6年配属。
在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。
「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。
人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。
趣味はサウナ。

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