関塚隆のプロフィール
鹿島アントラーズ コーチ
清水エスパルス コーチ
川崎フロンターレ 監督…J2優勝
U-23日本代表 監督…ロンドン五輪ベスト4
ジュビロ磐田 監督
ジェフユナイテッド千葉・市原 監督
日本サッカー協会 技術委員長
森保一監督が日本代表のコーチから監督に昇格した時期に、関塚隆氏は日本サッカー協会の技術委員長を務めていた。森保監督を当初バックアップしていた立場として、カタールW杯で見せた日本代表の戦いを振り返っている。
関塚隆氏は2018年から約2年間、日本サッカー協会の技術委員長を務め、そこからナショナルダイレクターに就任。日本代表を率いる森保監督を支える立場として、約3年間、協働している。
私は日本サッカー協会の技術委員長として、4年前のロシアW杯の後から約3年ほど、彼と一緒に仕事をした中で、批判もたくさんあったけれど、彼は自分の信念を信じて、長期的な視点でチーム作りに取り組んでいた。東京五輪と兼任したわけだけれど、五輪を経た上でのW杯のベスト8という目標地点からしっかりと逆算して、細かな決定を下していた。なので、五輪で培ったものを彼なりに分析し、それをA代表に還元して、W杯本番でのドイツとスペインの撃破に繋がったのだと感じている。良い守備から良い攻撃、招集した26人をレギュラーとして扱う考え方は、彼の中のポリシーだった。
今年4月に行われたW杯組み合わせ抽選会では、優勝候補ドイツ・スペインと同グループに配属されたことで、グループリーグ敗退の見立てが多かった。しかし、森保監督は当初からこの優勝候補の2チームに加え、コスタリカを相手に、グループリーグをいかに勝ち上がるか考え、ターンオーバーを含めた準備を進めていた。
優勝経験国の2チームと対戦することがわかって、この強豪の二強をどうやって打開するかを7ヶ月間考えた上で選んだ26人のメンバーだったわけだし、大会前から気後れせず、対等に戦うんだとチーム全員が意思統一して、W杯に乗り込むことができていた。ドイツとスペインが準備してこなかったことを、日本はしっかりと準備して臨んだ。ドイツ・スペイン戦を引き分けに持ち込み、コスタリカに勝利して突破を目指す。そう考える人が多かったかもしれないが、彼は初めからドイツ・スペイン戦を含めた3試合、そしてベスト16の4試合目にも勝利するべく、コンディション調整やメンバーチョイスを見据えていたと思う。
W杯に向けた4年間で、4バックと3バックをそれぞれ確認しつつ、抽選会からの約7ヶ月でドイツとスペインの試合に向けた対策を落とし込んだ。相手の強みを打ち消しつつ、弱みを突く、俗に言う“カメレオン戦術”で挑んだが、それはドイツとスペインだったからこその戦い方であったと見解を述べている。
4-3-3や4-2-3-1、そして彼がサンフレッチェ広島時代に培った3バックシステムを、大会前の試合で少しずつ小出しにして浸透させてきていたが、W杯本番で集大成としてしっかり仕上げてきた。90分間を通した対応力が鍵となるので、優勝候補と対戦することがわかった以上は、まずは相手のストロングポイントを消すこと、その上で、良い守備から良い攻撃だったり、強豪国に対して仕掛けるタイミングや試合運びといった持ち味を、チームに組み込むことができていた。これがドイツとスペインでなければ、また違ったアプローチをしていたのだと思う。
近代サッカーは、戦術がデータで細部まで分析される時代になっているが、森保監督は5人交代制度をフル活用した采配で、ドイツとスペインに対して“想定外”を生み出し、大胆な起用法が大金星を手繰り寄せた。その背景には、森保監督が積み上げた下準備があったと言及している。
日本は、今大会から導入された5人交代ルールを最も上手く活用したチームだと思っている。前半の出来を見て良し悪しをジャッジするのではなく、90分間の戦いを見据えて、前半と後半でメンバーとチーム構成を変えて、相手をかき乱す方法は見事に的中していた。これは、今までの代表チームにはない、斬新なやり方だった。大会前までは、交代が遅いという意見もあったみたいだが、選手個人を把握し、見極めることに注力していた段階だったのだろう。なので、本大会での起用法は大胆だったけれど、選手たちに困惑が生まれないような下準備は整えていたということかなと。
とりわけドイツ戦で見せた采配は、MF三笘薫とMF伊東純也をウイングバックに置く、これまでにない起用法に踏み切り、同じピッチに計6人のアタッカーを並べる大胆な采配を見せた。それについても関塚隆氏は、森保監督の入念な見極めが土台となっていると見解を示している。
特にドイツ戦の1点目に関しては、森保監督が取り組んできていた形だと思う。5レーンに選手を配置して、三笘が左から切り込んだ時に、南野がポケットに入って、中に折り返してボールがこぼれた時には、ボックス内に3人が構えていた。相手の4バックの中間ポジションに位置取りながら背後を狙っていた。アタッカーを6人同時起用も、選択肢としてあらかじめ熟考して手札として持っていた選択肢だったのだろう。本大会であの思い切った采配を決断できたのは、素晴らしかったと思う。選手一人ひとりとの信頼関係の構築、役割の明確化ができているからこそ、あの采配に至ったのだと思う。
森保監督の本大会での采配が、これまでに見せることのなかった大胆不敵な起用とSNSやメディアで大きな話題を呼んだが、4年間に及ぶ入念な準備と見極めの末に成り立っていた戦い方であると関塚隆氏は述べていた。
先発にベストメンバーの11人を送り出すのではなく、90分間をパッケージに交代枠5人を加えた16人で計算するチーム構成を組むスタイルは、他の国が取り入れていない新たな戦術として、世界からも注目を集めた。これまでは戦術的に後進国と評価されていたが、森保ジャパンが示した戦い方は、日本が“最先端”の戦術を提示してみせた重要な一歩となった。
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