マンチェスター・ユナイテッドにとって2021-22シーズンは、大きな試練となった。トップ4争いからも早々に脱落し、6位でフィニッシュ。象徴的だったのは、総得点数と総失点数がともに「57」で、得失点差が「0」に終わった点だ。ビッグ6ながら得失点差「0」は異例の事態とも言え、得点力不足と失点過多の両課題を物語っている。来季からテン・ハグ監督の元、攻守において大幅な変革がもたらされることが予想されるが、ユナイテッドは今後移籍市場でどのような立ち回りを見せるべきなのだろうか?現時点での実現度をあえて鑑みず、「Off The Ball」編集部内で独自の見解を談論した。
ここ最近のサッカー選手で一番インパクトを受けたのは、ブラジル代表でプレーするフレッジです。セレソンでプレーする彼は素晴らしいのに、ユナイテッドではパッとしない。別人のようになってしまう要因は、相棒なのではないかと思っています。セレソンでは、相棒にレアル・マドリードのブラジル代表MFカゼミーロがいる。カゼミーロがいるから、フレッジが攻撃に比重を置けるわけです。クラブでは、どうしても守備に注力しなければならない。それならば、いっそのことカゼミーロの獲得に動いてみてはどうでしょうか。レアルは超新星チュアメニを獲得したこともあり、中盤の世代交代を進める方針にはあるはず。そうなると、カゼミーロを売り時と考えている可能性もあります。
本当の理想で言えば、ウェストハムのイングランド代表MFデクラン・ライスだと思う。3,4年後、世界最高の守備的MFになっているのは彼ではないかと個人的には考えている。ユナイテッドの状況を踏まえたら、ここで100億円を出し惜しんでいる場合ではないと思う。数年後にリバプールやマンチェスター・シティと張り合いたいのならば、ファビーニョとロドリに匹敵する逸材の獲得を目指すべき。もし、ライス獲得が難しいのであれば、ウルブスのポルトガル代表MFルベン・ネヴェスの才能にも期待できる。彼は昨季のホーム最終戦となったノリッジ戦の試合後、ファンへの挨拶の際に感情的になっていた。今夏で新たなチャレンジに踏み出す決断をしているからこそのお別れの挨拶だったのではないだろうか。
あと、日本人だから優遇しているわけでは決してないですが、シュトゥットガルトの日本代表MF遠藤航の獲得も実際にありだと思っています。あそこまで献身的なハードワーカーがいてくれたら、フレッジの負担は大幅に減るはずで、最高の相棒になるかと。ブンデスリーガのデータでも、デュエル勝率で遠藤航は全選手の中でトップの数値を叩き出していました。しかも、2年連続です。これはプレミアリーグのビッグ6へと移籍する資格を充分に満たしている根拠になると思います。
あとは、噂にも上がっているけれど、バルセロナのオランダ代表MFフレンキー・デ・ヨングは確実に手中に収めたいところ。彼ほどの選手がなぜバルセロナで主力に定着し切れてないのかが不思議なほど、攻守を繋ぐリンクマンとして素晴らしい才能を備えている。テン・ハグ監督が就任したことで、エバートンに期限付き移籍していたオランダ代表MFドニー・ファン・デ・ベークも間違いなく戦力として重宝するはず。そして、デ・ヨングを獲得することができれば、テン・ハグ監督にとっては自身のサッカースタイルを忠実に体現できるアヤックス時代の愛弟子を中盤に2人据えることができる。これは非常に大きい。
アタッカー陣で言えば、C・ロナウドの動向で大きく変わってくるかと。ユナイテッドは来季、UEFAチャンピオンズリーグに出場できないわけですが、彼も今年で37歳。あと何回、欧州大会のピッチに立てるかと言われたら、おそらくもう多くはないはずです。来年、再来年になれば、欧州制覇の目標はどんどん遠のいていきます。ここで来季もユナイテッドに残るということは、今後のキャリアで何かを諦めないといけないものも出てくるかもしれないということです。それでもクラブに忠誠を誓って残留するのかどうか。もし退団するのであれば、即戦力としてバイエルン・ミュンヘンのポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキの獲得へ迅速に動くべきかと思います。
でも、世界最高の高給取りであるC・ロナウドを獲得できるクラブは、数えるほどしかない。もし仮にC・ロナウドに退団する意思があっても、実際に退団できるのかどうかは別の話。PSGは今のところ獲得に動く様子もない。チェルシーも資金調達が不透明となってくると、最終的にはユナイテッド残留で落ち着くのではないだろうか。自分は、ウイングの補強はマストだと思っている。テン・ハグ監督は、右ウイングに左利きを置きたい指揮官。そうなると、一番手っ取り早いのは、アヤックス時代の愛弟子であるブラジル代表FWアントニー・マテウスだろう。師弟間の信頼関係も厚く、得点力も申し分ない。アントニーを最優先に、もし獲得が難しければ、バイエルン・ミュンヘンのドイツ代表FWセルジュ・ニャブリは獲得のチャンスがあるはず。
あとは、やはりCB問題ですよね。正直…マグワイアは厳しいですよね。新たなディフェンスリーダーの獲得は急務だと思います。そのような点では、バルセロナの元スペイン代表DFジェラール・ピケはどうでしょうか。彼はバルセロナで大幅な減給を余儀なくされ、控えの立場を受け入れざるを得ない状況です。残りのキャリアを考えれば、高額な年棒を用意してくれて、主力としてプレーできる可能性の高い、ユナイテッドへの凱旋は選択肢として決して悪くはない。ユナイテッドとしても、彼がバルセロナで培った経験値は頼りになるはずです。
マグワイアとデ・ヘアの相性があまりに悪すぎる。ビルドアップ能力はあるが足の遅いマグワイアと、シュートストップは世界最高峰だが飛び出しは不得手なデ・ヘアでは、互いの欠点を補うことができない。自分は、100億を払う覚悟を持ってしてでも、ビジャレアルのスペイン代表DFパウ・トーレスの獲得に乗り出すべきだと思う。彼は対人もスピードも全く問題ないうえに、世界でトップと言えるほどのビルドアップ能力がある。そう遠くない未来に、彼の時代が来る。100億円という巨額は、彼のような選手に払うべきだ。
2021-22シーズンのユナイテッドは、トップ4争いから早々に脱落し、得点力不足・失点過多に直面する苦境のシーズンとなった。テン・ハグ体制で新たな船出を切ることになるが、ユナイテッドが再び世界屈指のメガクラブへと復活を遂げるべく、積極的な大型補強が必要となってくるが、今夏の補強候補として、
上記の名前が挙げられた。5年連続の無冠と苦境の時期を過ごしているユナイテッドだが、テン・ハグ監督は再建に導くことができるのだろうか。補強策を含め、その手腕に注目が集まる。