マンCvsレアル、勝敗の鍵となったのは?城福浩が解説「不在が響いた」

2022年4月26日、UEFAチャンピオンズリーグ準決勝の第1戦でマンチェスター・シティvsレアル・マドリードが開催。シティが本拠地エティハド・スタジアムで4-3と熾烈なシーソーゲームを制した。プレミアリーグとリーガ・エスパニョーラの首位対決にふさわしい激闘となったが、数々のJクラブを指揮してきた城福浩氏は、ブラジル代表MFカゼミーロ不在による影響が勝敗の鍵となったと見解を述べている。

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初速力でマンCが序盤からレアルを圧倒

両チームともリーグ戦で首位に立っているとは言っても、置かれている状況は大きく異なる。シティはプレミアリーグでリバプールと壮絶な優勝争いを演じ、毎試合でナーバスな戦いを強いられている一方、レアルはリーグ首位を独走しており、優勝は既定路線となっている。そんな中で迎えた大一番、前半にその立場を活かしたのは、よりフィジカル面、精神面で負荷のかかっているシティだった。緊張感の持続が、試合開始からシティの初速力を高めた。

ひとまず様子を見るような立ち上がりを見せたレアルの緩みを突くように、試合開始からフルスロットルで仕掛けたシティが、キックオフからわずか11分間で2ゴールを決める波乱の展開に。その後も怒涛のように決定機を作り出すシティ、間一髪のところで耐え続けるレアルの構図となったが、最初のチャンスをフランス代表FWカリム・ベンゼマが見事に決め切り、圧倒的に押し込まれながらも1点差で前半を折り返した。

城福 浩

前半は完璧にシティのペースだった。両サイドバック、ストーンズのビルドアップ、ジンチェンコの守備力に危うさはあったが、それでも主導権を握り続け、ゴールを脅かし続けた。対するレアルは、本当に何もできなかった。クロースが下がらざるを得なかったため、攻撃面で良さが出せない。守備も前からいけなかったのは、カゼミーロ不在の心理的影響も、もしかしたらあるかもしれない。全体的にロドリを掴み切れず、そこからズレて取りどころもなかった。そのような状況でも、ワンチャンスをモノにするベンゼマの決定力が光った。

フェルナンジーニョの緊急投入でサイドの攻防が活性化

また、この試合で最初に動いたのはシティだった。前半36分、イングランド代表DFジョン・ストーンズが負傷明けでコンディションが整っていない中、本職ではない右サイドバックに入っていたこともあり、ジョゼップ・グアルディオラ監督は早めにピンチの芽を摘むべく、中盤が主戦場であるブラジル代表MFフェルナンジーニョをピンチヒッターで投入した。

城福 浩

ストーンズに代えてフェルナンジーニョは試合に大きな影響をもたらしたと思う。彼のIQの高さとヴィニシウスのスピードのサイドの攻防が活性化された。

後半開始早々、途中出場のフェルナンジーニョが相手のパスコースを読んでインターセプトすると、そのままワンツーで右サイドを駆け上がってクロスを供給。イングランド代表MFフィル・フォーデンのヘディング弾をお膳立てし、指揮官の起用に応えた。しかし、直後の2分後、アシストを記録したことでやや前がかりになったフェルナンジーニョを、ブラジル代表FWヴィニシウスが華麗な反転で抜き去り、ハーフウェーラインからドリブルで独走すると、そのままゴールに流し込んだ。フェルナンジーニョとヴィニシウスのサイドから互いにやり合う白熱した展開となった。

カゼミーロの不在がレアルにとって大きな痛手に

その後、互いに1得点ずつ追加し、最終的には4-3と壮絶な打ち合いとなったが、城福浩氏は負傷により先発から外れたカゼミーロの不在がもたらした影響に注目。本来インサイドハーフを務めるクロースがアンカーに配置されたが、最初の2失点に関するクロースの立ち回りを解説している。

城福 浩

中盤3枚に注目すると、(相手インサイドハーフの)デ・ブライネとベルナルド・シウバを自分たちの背後でプレーさせたくない、バイタルエリアに簡単に侵入させないという思いで試合に入ったと思われる。ボール支配に長けた相手に対して、とにかくカゼミーロの不在が響いた。1失点目はアラバが引き出され、クロースが穴を埋めるポジションを取り、そこからクロッサーのマフレズに対しての圧力をかける必要があったが、その迫力が不足していた。マフレズにあっさりカットインさせたのがきっかけではあるが、カゼミーロが入ればもっと強くプレスにいってあそこまで自由にクロスは上げさせなかっただろう。2失点目に関しても、ミリトンとカルバハルが引き出された際、クロースがはっきりと戻らなかったことで、カルバハルがスペースを埋めるために、それまで付いていたデ・ブライネへのマークを離さざるを得なかった。そこからデ・ブライネにバックパスされてしまい、フリーで蹴らせてしまった。リーグ戦ではクロースがアンカーでも総合力で勝ち切ることはできるかもしれない。ただ、シティという最高峰の強敵には、ベストな選手がベストなポジションでプレーしなければ、わずかな隙も抜かり無く突かれてしまう。

ストライカーの不在で築いたマンCのスタイル

一方、シティは前半から怒涛のように決定機を作り出し、この第1戦でベスト4の決着をつけることができる内容だっただけに、決め切れなかった数多くの決定機が悔やまれる展開だった。ベンゼマのような絶対的ストライカーの不在の中、最近はノルウェー代表FWアーリング・ハーランドの獲得も取り沙汰されているシティだが、城福浩氏はストライカーの不在が今のシティのスタイルを築いていると述べている。

城福 浩

ゴール前の仕事を専門職にするクラシカルなストライカーがいないからこそ、モビリティーのある攻撃をどこからでも出来る、という考え方もある。決定力がないという見方より、あのような(チャンスメイクに長けた)タイプの選手を揃えているからこそ、チャンスをより多く作ることができているというのは実際にある。なので、決定機を多く作ることで勝ち上がってきたのがシティであり、この試合もシティらしさを遺憾無く発揮できたと言える。そういう意味では、何も起こりそうにないところから3得点を奪ったのがレアルらしさなのかもしれない。

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レアルvsマンCの第2戦で鍵となるのは…

レアルとしては圧倒的に押し込まれながらも、わずか1点差で本拠地サンティアゴ・ベルナベルに迎え撃つことができる。冒頭で指摘したように、リーグ戦で互いに置かれている状況が、今度はレアル側に好転する可能性がある。

城福 浩

2ndレグに向けて鍵となるのは、やはり負傷者の復帰。レアルであれば、アラバとカゼミーロの完全復帰。これでクロースがどのエリアでプレーできるのかが決まる。クロースが本来の位置でプレーできれば、攻撃面でシティにとっても大きな脅威となる。一方、シティはカンセロが累積警告から戻ってくるので、そこが大きい。あとは、リーガとプレミアの状況も影響してくるだろう。熾烈な優勝争いを演じるシティに対し、ほぼCLに集中できるレアルは状況的なアドバンテージもある。このシーズン終盤に選手起用やコンディション作りをCLから逆算できるのは大きい。

また、アルジェリア代表MFリヤド・マフレズの2つのプレーが次戦の運命を分けることになるかもしれない。前半に迎えた2対1の局面、パスを通せば1点ものだったが、マフレズは利き足でない右足のシュートを選択し、決定機を棒に振った。この場面にはペップも怒りを露わにするジェスチャーを示していた。また、後半にもGKとの1vs1で放ったシュートがポストを叩き、ゴールを逃すことに。いずれかを決めていれば、シティにとって第2戦の大きなアドバンテージとなっただけに、悔やまれるシーンとなった。

城福 浩

レアルからしたら、前半の戦い方はまずかったが、あの内容で1-2で凌げたのが大きかった。対するシティは、マフレズが2度にわたって決定機を外したのが大きかった。これが2ndレグにどのような影響をもたらすのか、注目ポイントになる。

CLベスト4第1戦マンCvsレアルの総括

【引用:CL公式Twitter】

CLベスト4の第1戦はホームのシティがレアルを試合内容で圧倒し4得点を奪った一方、幾度となく生み出したチャンスを決め切れない場面も目立った。一方、レアルはカゼミーロの不在により、クロースが適正ポジションでプレーできなかったことが響く形となったが、ほとんどチャンスを生み出せなかった状況で、驚異的な決定力を見せて3得点を奪取。わずか1点差で、本拠地でのリターンマッチを迎えることになった。プレミアリーグでハードな優勝争いを演じているシティに対し、リーグ優勝をほぼ手中に収めているレアルの、立場の違いが第2戦にどのような影響をもたらすことになるのか注目だ。

当記事のインタビュイー

城福浩のプロフィール

U-17日本代表 監督…AFC U-17選手権優勝

FC東京 監督…ナビスコ杯優勝

ヴァンフォーレ甲府 監督…J2優勝

サンフレッチェ広島 監督…J1リーグ2位

東京ヴェルディ 監督…2022年〜現在

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ジョータツ

「Off The Ball」編集長。 大手サッカー専門メディアに過去6年配属。 在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。 「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。 人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。 趣味はサウナ。