オランダ代表DFユリエン・ティンバーは、近代サッカーを象徴する“攻撃的CB”の代表格だ。身長179cmと比較的に小柄なディフェンダーであるにも関わらず、21歳にしてオランダの名門アヤックス・アムステルダムでは主力として地位を築き、2023年7月にはプレミアリーグのアーセナルへとステップアップ移籍を果たした。そんな”小さな巨人”ティンバーのプレースタイルやキャリアを本記事では紹介していく。
生年月日 | 2001年6月17日 |
国籍 | オランダ(キュラソー、アルバ) |
所属クラブ | アーセナル |
ポジション | DF |
身長 | 179cm |
利き足 | 右足 |
経歴 | ヨング・アヤックス→アヤックス・アムステルダム→アーセナル |
ユリエン・ティンバーはセンターバック(CB)や右サイドバック(RB)でプレーすることのできるユーティリティ性を兼ね備えたプレーヤーだ。
そんな彼のプレースタイルは一言で言い表すならば”守備強度の高い現代型ディフェンダー”である。守備面において179cmとCBにおいては小柄な部類ではあるが、対人守備に秀でており相手に当たり負けることなくしっかりとボールを奪うことができる。実際に21-22シーズンにおいてデュエルの勝率は67%を記録している。空中戦におけるデュエル勝率にフォーカスしても61%を記録しており小柄であることを決して感じさせない。それに加えて、身体能力が高く、スピードがあるので空いたスペースをいち早くカバーリングできるのも彼の強みだろう。
またDFでありながら、優れたパスセンスと足元のテクニックを持っており、ボールを保持した際に相手からのプレスに臆することなくパスを通すことができる。このように彼がCBの一角を務めることで後方からのビルドアップが非常にスムーズなものとなる。パス成功率も90%を超えており、数字の面でも彼のパスの精度の高さを裏付けしている。
特筆すべきは、ティンバーの攻撃参加だ。ビルドアップはもちろんのこと、最終ラインからの持ち運びが、所属するアヤックスでは要となっており、オランダ代表にとっても大きな武器となっている。
攻撃面と守備面でチームに貢献できるティンバーは現代サッカーにおいては不可欠なディフェンダーといえるだろう。
こちらは22-23シーズン第11節RKCワールワイク戦のハイライト。この試合でCBとして出場したティンバーは後半17分に持ち前のパスセンスを活かし、スルーパスを通してチームメイトのゴールをアシストした。
こちらは21-22シーズン第19節FCユトレヒト戦での守備時のワンシーン。相手FWに対して走り負けることなく、きちんとマイボールにしただけでなくプレスに来た相手も華麗にかわしている。彼の良さでもある守備能力と足元の技術の高さを同時に窺える。
ユリエン・ティンバーは2001年6月17日にオランダのユトレヒトで生まれた。オランダ王国を構成する島々であるキュラソー、アルバ出身の両親を持つ彼は地元ユトレヒトのアマチュアクラブDVSUで双子の兄クインテンと共にサッカーを始めた。DVSUではチームを引っ張る存在となっていたティンバー兄弟は2008年にオランダの名門フェイエノールトの下部組織に入団した。地元ユトレヒトからは遠く離れたロッテルダムの地で着実に実力を伸ばしていったティンバー兄弟だったが、中学校に進学するタイミングで家庭の事情もあり、アヤックス・アムステルダムの下部組織へ移籍することとなる。
アヤックスへ移籍して徐々に環境に順応していった兄弟は2017年にU17のチームでデビューを果たすとその世代の中心的な存在となっていき、成長していく。そしてユリエンは19-20シーズンの第26節SCヘーレンフェーン戦にてトップチームデビューを果たす。翌20-21シーズンではリーグ開幕戦から出場機会をつかみ、ケガによる離脱もあったもののリーグ戦20試合に出場するなど主力として成長していった。そして21-22シーズンは公式戦43試合に出場し、アヤックスになくてはならない存在となった。これらの活躍もあって移籍の噂が絶えなかったユリエンだったが2022年8月18日アヤックスと2025年まで契約を延長した。
代表に関してはオランダのU-17,U-19,U-21カテゴリーで選出されており、ユーロ2020ではA代表に初選出され、2021年6月2日のスコットランドとの親善試合で代表デビューを果たした。21歳ながらA代表で今まで10試合出場してきた彼は今回のカタールW杯のオランダ代表に選出されており、活躍が期待される。
2023年7月14日にアーセナルへと移籍し、初挑戦となるプレミアリーグでの活躍が期待される。日本代表DF冨安健洋とポジション争いをすることとなるであろう。
21歳ながらアヤックスの主力CBにまで成長したティンバーの市場価値は4500万ユーロとなっており、エールディヴィジでプレーする選手の中ではオランダ代表FWコーディ・ガクポと並んで1番高い値となっている。
今夏は師弟関係のあるエリック・テン・ハーグがマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任したこともあり、ユナイテッドへの移籍も噂されたがカタールW杯のこともありひとまずアヤックスへの残留を決断した。しかしながら現代型ディフェンダーの素質を兼ね備えているティンバーはもはやビッグクラブから関心を寄せられる存在であり、今後の動向に注目だったが、2023年夏にアーセナルへと移籍した。
179cmと小柄ではあるもののビルドアップでの貢献や持ち前の身体能力を活かした守備強度の高さを武器にアヤックスで名を上げたユリエン・ティンバー。将来のオランダの最終ラインを担っていく存在ともいえる彼の今後の成長からは目が離せない。アーセナルへとステップアップを果たし、プレミアリーグでの活躍が期待される。