MFジュード・ベリンガムは、イングランド史上最高の才能と評されている。19歳にしてドルトムントの中心選手として君臨し、W杯では主力としてイングランド代表を牽引し、約150億円でレアル・マドリードへの移籍を遂げた。今回は、そんな次世代のサッカー界を担うベリンガムについて、プレースタイルやエピソード等、複数の面から紹介していく。
生年月日 | 2003年6月29日 |
国籍 | イングランド |
所属クラブ | レアル・マドリード |
ポジション | MF |
身長 | 186cm |
利き足 | 右足 |
経歴 | バーミンガム・シティFC→ボルシア・ドルトムント→レアル・マドリード |
ベリンがむのプレースタイルが最も活きるのは、ボランチやインサイドハーフだ。攻撃と守備の両方を担わなければならないポジションこそ、彼の主戦場にふさわしいのである。
そんなベリンガムの能力を、まずは攻撃面から見ていこう。ベリンガムは攻撃の起点になることを常に狙っている。最終ラインからパスを受けようとポジションを落としたり、スペースを見つけて動くなど、自らのポジショニングに気を配っている。そしていざスペースでボールを受けると向きを素早く転換し、前への推進力を発揮する。その間にも、ベリンガムは冷静に周りを確認する。チャンスと見るや正確なパスを供給してチャンスメイクをする。膠着している状況では自らのテクニックで相手を翻弄。ゼロからチャンスを創り出すスキルも備えている。ゴール前でも落ち着きを示す。フェイントで守備を騙して引き付け、決定的なチャンスを演出する。3列目からの攻撃参加においては、現時点でベリンガムが世界最高の存在と言っても過言ではないかもしれない。
また、ベリンガムは守備面での貢献も大きい。ボランチに求められるボール奪取の仕事を果たすべく、攻めに来る相手に果敢にチャレンジする。スライディングでパスをカット、直接ドリブルに挑んでボールを刈り取るなど、精力的に守備に奔走する。また中盤のプレスに関わっていると思いきや、気づけば最前線でハーランドと共に相手の最終ラインへ圧力をかけている姿も彼の印象的なプレーである。ドルトムントにおいて、ベリンガムはどこへでも顔を出す中心人物になっている。ベテランボランチのような落ち着いたプレーをするが、忘れてはいけない。彼はまだ19歳なのだ。
ブンデスリーガでのゴールとアシストがまとめられた動画がこちら。
また、ベリンガムによる素晴らしいパスをドルトムントがまとめている。
シュートを選択しても良いような場面でもしっかりと周りを見渡し、確実に得点に繋がるようなパスを供給する。若さゆえのチャレンジングな、悪く言えば無謀なプレーというのは彼の辞書にはないのかもしれない。
8歳でバーミンガム・シティのアカデミーに加入した才能は常識を超えるものであった。14歳ながらU18チームでプレーし、更にはU23チームに15歳でデビュー。将来有望なイングランドの10代として紹介され各国クラブから注目を浴びるなど、エリートコースを堂々と突き進む。19-20シーズン、ついにベリンガムはトップチームのプレシーズンキャンプに招集。背番号22を与えられた16歳は、誕生日から38日後のEFLカップでプロデビューを果たす。チーム最年少記録を塗り替えた彼の活躍は止まらず、16歳63日で初得点を記録。こちらもチーム最年少記録となった。
強烈なデビューを飾ったベリンガムには、冬の移籍市場で多くの関心が寄せられた。移籍期間最終日にはマンチェスター・ユナイテッドから2000万ポンドのオファーがあったとされるが、結局クラブに残留。シーズンを通じて活躍を続け、シーズン終了後にはEFLの最優秀若手選手賞を受賞した。過去類を見ない選手になったベリンガムに届いた数々の移籍オファーの中から彼が選んだのは、ブンデスリーガの強豪、ドルトムントであった。2500万ポンド(約35億円)という移籍金は17歳の選手に支払うものとして最高の金額で移籍する。
ドルトムントでの初戦は、17歳77日で迎えたDFBポカール。ここで彼は早速ゴールを奪う。更にブンデスリーガ開幕戦ではアシストを記録。こうしてベリンガムはドルトムントのレギュラーに当然のように定着してみせたのである。
イングランド代表でも各年代からキャプテンを務め、エースとして輝く。2020年11月にフル代表へ初招集され、親善試合で初出場を果たす。この時彼は同国代表史上3番目の年齢、17歳136日であった。さらに翌年のEURO本戦にも17歳349日で出場し、EURO史上最年少記録を塗り替えた。
2023年6月、レアル・マドリードへと完全移籍を遂げた。1億3000万ユーロ(約150億円)+ボーナスで、最大1億3390万ユーロ(約200億円)となる見込み。
落ち着いたプレーを見せ続けるベリンガムだが、21年12月のバイエルン戦では判定に納得がいかず、試合後のインタビューで審判と協会を揶揄するような発言をしたことで罰金の処分がくだされたこともある。またプレーに納得がいかず、一回りも歳が上のシュルツに鬼の形相で不満をあらわにしたこともある。彼の心は、プレーとは裏腹に熱く燃えている事が窺える。
その一方でベリンガムは、イングランドがEURO決勝で敗北した時に行われてしまった人種差別に対して、反対するツイートをしている。大の大人がこぞってネット上で罵詈雑言を書き連ねていた時に投稿された10代の冷静なツイートには、多くの好意的なコメントが寄せられた。
19歳ながらドルトムント、イングランド代表で確固たる地位を築いたベリンガムは、満を持してレアル・マドリードへと活躍の場を移す。
攻守においてすでに世界トップクラスの実力者であり、イングランド人選手として“白い巨人”でどのような活躍を披露してみせるのか、必見だ。