イングランド・プレミアリーグの歴代最年少出場記録を持つ、ハーヴェイ・エリオット。ユース時代から神童と呼ばれるほどの才能を持ち、若くして将来の期待を受ける彼であるが、少年時代からファンであったリバプールへ所属し、現代最高の監督の1人であるクロップの指導のもとでさらなる進化を見せている。この記事ではエリオットのプレースタイルやスーパープレー、エピソードにて、彼の強みや、人間性を紹介していく。
生年月日 | 2003年4月4日 |
国籍 | イングランド |
所属クラブ | リバプールFC |
ポジション | MF/FW |
身長 | 170cm |
利き足 | 左 |
経歴 | フラムFC→リバプールFC→ブラックバーン・ロヴァーズFC(loan) |
メインポジションは右インサイドハーフと右WG。フラム時代やブラックバーンでのレンタル時代は右のWGを担当し、細かなタッチとキレのあるドリブルで相手陣内を切り裂いていき、右サイドから左足でシュートを狙っていくドリブラーとしての役割を主に担っていた。現在所属するリバプールでは、右のWGにはチームで絶対的な存在となっているエジプト代表FWモハメド・サラーが君臨しているため、ユルゲン・クロップ監督はエリオットにインサイドハーフとしての適性を見出し、起用している。エリオットのドリブルは、サラーや現バイエルン・ミュンヘン所属のセネガル代表FWサディオ・マネのような爆発的なスピードを活かしたドリブルではなく、細かなタッチとクイックネスで相手DFの重心の逆を突いていくタイプである。また、ドリブル中の姿勢が良いため、常にルックアップし、周りの状況を把握し、味方と連携しながらボールを運んでいくことが出来る。インサイドハーフで起用された際には、この状況判断能力の高さが活きてくる。足元の技術も申し分ないほどの高い能力を持っているため、乱れのないトラップにてボールをしっかり足元へ収め、ルックアップにて状況判断をし、パスorドリブルの選択を素早く行う。状況判断の良さは、ポジショニングにも繋がっており、相手DFとMFのライン間でボールを受けてファイナルサードで仕事をするか、DMFのそばに降りてアウトレットに参加するかといった判断も適切に行っている。また、右WGのサラーと、右SBのイングランド代表DFトレント・アレクサンダー=アーノルドとの連携も出来ており、誰がサイドで幅を取るのか、誰が中央に入るのかをその場の状況で判断しポジショニングしている。
リバプールのインサイドハーフに入る場合には、非常に多くの運動量が必要とされ、フィジカルも求められる。エリオットには強靭なフィジカルと上背が無いことが弱点ではあるが、豊富な運動量と献身性でそれをなんとかカバーしている。相手が守備ブロックを敷き、そのブロックを崩す必要がある試合においては、エリオットがインサイドハーフにいることがメリットになる試合が多くなるだろう。ただ、相手のレベルが上がるチャンピオンズリーグなどで、中盤でのデュエルによって局面が変わってくる試合においては、エリオットの真価が試されるであろう。
今後、エリオットがリバプールに欠かせない中心選手となれるかどうか。その成長に期待して、注目して見ていきたい。
リバプール移籍後にレンタル先となったブラックバーンにて、チャンピオンシップ第15節のミルウォールFC戦で決めたスーパーゴール。味方の柔らかな横パスの落としに対してペナルティーエリア右端から左足でダイレクトシュート。カーブがかかり、コントロールされたシュートはGKの手の届かないゴール左上へ吸い込まれた。このゴールはクラブの年間最優秀ゴールに選出された。
【引用:Blackburn Rovers】
2021年8月21日、プレミアリーグ第2節のバーンリーFC戦でのプレー。イングランド代表MFジョーダン・ヘンダーソンからのパスをペナルティーエリア手前のライン間で受けたエリオットは、見事なトラップから相手DFのプレッシャーを避けて素早く反転し、ルックアップ。右サイドでフリーになっているサラーを確認し、サラーの利き足である左足でダイレクトシュートを打ってくださいと言わんばかりのスルーパスを提供した。惜しくもサラーがオフサイドでゴールとはならなかったが、エリオットの技術と状況判断能力の高さを見せたプレーであった。
イングランドのサリー州チャートシー出身のエリオットは、クイーンズ・パーク・レンジャーズFC(QPR)のユースで成長し、フラムに入団する。2017-18シーズンには当時15歳ながら、U-18のカテゴリのリーグでプレーしていたほどの才能の持ち主であった。2018年9月25日、EFLカップのミルウォール戦で後半36分から途中出場し、15歳174日でクラブとカップ戦における史上最年少記録でのプロデビューを果たした。また、2019年5月4日、プレミアリーグのウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFC戦では後半43分から途中出場し、16歳60日でのプレミアリーグ史上最年少デビュー記録を達成し、歴史に名を刻んだ。それまでの記録は2007年に当時フラム所属のマシュー・ブリッグスの16歳68日だったため、その記録を8日更新したこととなる。
若き才能の持ち主であるエリオットには、イングランドのビッグクラブを初め、レアル・マドリードやバルセロナFC、RBライプツィヒなど、多くのクラブが狙っているとされていたが、2019年7月28日にリバプールが獲得を発表した。2020年10月16日にはブラックバーンへローン移籍し、イングランド2部のチャンピオンシップにてチームの中心選手として41試合に出場し、7ゴール11アシストをマークする活躍を見せた。
2021−22シーズンからはレンタルバックしたリバプールで主にインサイドハーフのポジションでプレミアリーグ開幕戦から出場していたが、2021年9月12日のリーズ・ユナイテッドFC戦にて左足首を骨折脱臼で手術が必要な大怪我を負い、離脱を余儀なくされた。怪我からの復帰となった2022年2月6日、FAカップ4回戦のカーディフ・シティFC戦では後半58分から途中出場し、76分にはゴールも記録した。
イングランドのA代表への招集・出場はまだ無いが、初招集まではそう遠い未来ではないだろう。今後のA代表選出に期待したい。
フラムで神童とまで言われるほどに頭角を表していたエリオットには、国内外問わず多くのクラブが獲得を狙っていたとされており、スペインのメガクラブであるレアル・マドリードも獲得を目指していた。実際にレアル・マドリードはエリオットをマドリードに招待し、当時のキャプテンである元スペイン代表DFセルヒオ・ラモスとの対面を提案されたとのこと。だが、少年時代からリバプールのファンであったエリオットは、2017-18シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝にてサラーを脇固めで故障へと追いやったラモスのことを好ましく思っておらず、この提案を拒否した。結果としてずっとファンであったリバプールが獲得を勝ち取った訳だが、あの危険なプレーが若き才能溢れる選手の移籍にまで影響していた。
また、上記キャリア欄でも記述したが、2021年9月12日のリーズ戦にて左足首を骨折脱臼する大怪我を負ってしまった。彼へタックルしたオランダ人DFパスカル・ストライクは主審からレッドカードを提示されたが、エリオットは「彼のせいではないよ。レッドカードでもないし、ただのアクシデントだ。」と負傷後に語り、またレッドカード判定を不服としたリーズの控訴が却下された際には、「パスカルにとって残念な結果だ。僕はそれは間違っていると思う。でも兄弟はこれをすぐ乗り越えて帰って来るはずさ。ポジティブに行こう!」と、スカイ・スポーツのこのニュースに関するSNS投稿に対して返信した。さらには負傷で搬送された病院でリバプールファンの少年と遭遇し、負傷したリーズ戦で着用していたユニフォームとシューズをプレゼントしたという。素晴らしい人間性の持ち主だとわかるエピソードである。
2003年生まれの弱冠19歳(2022年時点)ながら、世界最高レベルにあるリバプールにて堂々とポジション争いに加わっているエリオットは、ものすごい才能と技術、メンタルの持ち主であることは間違いないであろう。日本代表MF久保建英が2001年生まれでエリオットの2歳年上ということを聞くと、その凄みが理解できるであろう。今後、リバプールに欠かせない選手としてチームを引っ張る立場となっていくであろうが、どのような成長を見せてくれるのか、是非とも注目して見てほしい選手の1人である。イングランドのA代表に選出され、代表でも中心選手としてプレーしていく姿が見れるのもそう遠い未来ではないはずだ。