現在の日本代表で最も不可欠な選手は誰か?そう尋ねられた際、多くの方々が「伊東純也」の名を口にするのではないだろうか。森保一監督が就任して4年が経ち、集大成となるカタールW杯を間近に控えている中、不可欠なエースとして立場を築いたのが伊東純也だ。所属するベルギーリーグのKRCヘンクでも、クラブやチームメートから絶大な信頼を寄せられる大黒柱として活躍している一方、伊東純也が直面した試練について、サッカー専門YouTubeチャンネルでMCを務め、データ企業を経営する戦術分析家のノーミルク佐藤氏が解説している。
伊東純也のパフォーマンスの変化には「歴然たる理由がある」
2019年からヘンクに加入した伊東純也は、初の海外挑戦ながらも即座にフィットし、今では右ウイングで不動の地位を築いている。2021-22シーズンでは、リーグ戦で8ゴール18アシストを記録し、アシスト王を受賞する大車輪の活躍を示した。一方、ノーミルク佐藤氏は、伊東純也の本領を全て発揮できたシーズンにはならなかったと言及している。
伊東選手は、2021-22シーズンでアシスト王に輝く素晴らしい活躍を残した。しかし、パフォーマンスとしては、実は昨季の方がよかったんだよね。もちろんアシスト王だから申し分ないのだけれど、昨季の方があらゆる面でよかったという旨を、本人も口にしている。では、なぜ1シーズン前よりも、失礼な言い方になってしまうが、パフォーマンスが少し低下してしまったのか。そこには歴然たる理由がある。
ベルギーリーグ全体で確立された「伊東純也シフト」
数字上では目覚ましい結果を残しているものの、伊東純也自身の最大値を発揮するのに苦労した要因はなんだったのだろうか?
簡潔に言うと、対策。現地メディアでも取り上げられていたが、「伊東純也シフト」が確立されていたことが大きい。つまり、ベルギーリーグ全体で「この選手は抑えなければいけない存在」と警戒されていたということ。また、ベルギーはJリーグと比べても、1on1のデュエルが重んじられる。そのため対戦相手の選手からしたら「イトウを止めれば、自分の評価が上がる」というターゲットになってしまった部分があった。
伊東純也はヘンクで「ソン・フンミンの役割を果たしている」
ヘンクはチームとして、伊東純也からのチャンスメイクを攻撃の軸としている。対戦相手としては、ヘンクの攻撃を封じる=伊東純也を封じる、という対策に直結するため、中心選手だからこそ直面した壁と言える。
アシスト王という成果が物語っているように、ヘンクは伊東選手が得点の起点となっているので、伊東選手にさえボールを渡さなければ防げる、という相手の対策の的になってしまっていた。そういう意味では、ヘンクが伊東選手に頼りすぎてしまっていた、というのもあると言える。ハリー・ケインとソン・フンミンで得点を量産しているトッテナムに少し似通っているね。ポール・オヌアチュがハリー・ケイン役で、伊東選手がソン・フンミンの役目を果たしていると言えばわかりやすいかな。
伊東純也は「もう日本人選手という括りには留まらない」
これまでベルギーリーグでは、シント=トロイデンVVに所属していた現フランクフルトの日本代表MF鎌田大地や、スタンダール・リエージュに所属していた現ストラスブールの日本代表GK川島永嗣など、数多くの日本人選手がプレーしてきた中、伊東純也は歴代でも抜きん出た存在になりつつあるようだ。
ベルギーリーグでは数多くの日本人選手がプレーしてきたけれど、ベルギーの中で日本人選手といえばこの人、という現地の認識は、今は森岡亮太選手と伊東選手の2人になっている。確か三笘選手も言っていたが、森岡選手と伊東選手だけは、相手が徹底的な対策を施してくる存在になっている、と。また、伊東選手は、キーパス数やチャンスメイク数が2位の選手に倍をつける数字を残している。「伊東純也シフト」で対策されたにも関わらず、2位の倍。これはもう日本人選手という括りには留まらない。これまでベルギーリーグに在籍してきた全選手の中で、彼はトップクラスの選手であると証だ。
伊東純也が直面した試練のまとめ
エースとして日本代表を牽引している伊東純也は、ヘンクでもアシスト王に輝くなど、主軸の役目を果たしており、対戦相手も「伊東純也システム」の対策を投じてくることに。それ故に、数字上の結果は申し分ないものの、伊東純也自身が持っている全ての力を出し切るには苦労するシーズンとなり、それだけベルギーリーグ内で突出した存在になっているとノーミルク佐藤氏は指摘していた。キャリアのピークでカタールW杯を迎える伊東純也の活躍に期待したい。
※伊東純也は2022年夏にフランスのスタッド・ランスへの完全移籍が決定。
ノーミルク佐藤のプロフィール
株式会社Lifepicture代表取締役、YouTubeCH「ミルアカ」MC『ノーミルク佐藤』。
複数webメディアの運営や企業の経営改善、マーケティング、プロモーション、教育事業を行う傍ら、自社でサッカーのデータラボを立ち上げ、独自にデータの収集・分析・開発を行う。
ABEMA「ゼルつく」の専属データマンとしての出演、ABEMA「FIFAワールドカップ2022抽選会生中継〜最速予想&分析SP〜」などの出演、GOAL主催Jリーグ版NXGN2021選考委員等も務める。