鎌田大地、日本代表の起用法は?鍵は「プレス」と小倉勉氏が持論

フランクフルトの日本代表MF鎌田大地は、UEFAヨーロッパリーグ優勝の立役者となり、数々のビッグクラブ相手にも堂々たるパフォーマンスを示している。ロンドン五輪のヘッドコーチを務め、現在は東京ヴェルディのヘッドコーチに就任している小倉勉氏は、今後の日本代表での起用法について、持論を述べている。

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EL決勝進出のフランクフルトで攻撃の要となる鎌田大地

フランクフルトは2021-22シーズン、ブンデスリーガでは11位と振るわない成績に終わった一方、ELでは史上初の決勝戦へと駒を進めた。シーズン序盤は本領を発揮し切れずに苦労していた鎌田だが、シャドーの位置で本来の輝きを取り戻し、主力として大きくチームに貢献している。

小倉 勉

フランクフルトは、鎌田、コスティッチ、リンドストロムが攻撃の要となっている。それぞれ異なる個性を備えていて、コスティッチは左サイドのスペシャリストで、ゴールもアシストもできる。リンドストロムは外から中に入ってくる動きやドリブルを得意としていて、裏を取れるスピードを持った選手。その2人と鎌田の相性が非常に良い。

鎌田大地がブンデスリーガよりELで活躍できる理由は「プレス」

鎌田はリーグ戦では32試合出場で4ゴール3アシストに留まったが、ELでは12試合出場で5ゴール1アシストを記録。現地メディアでも“EL男”と表現されるほど、欧州の舞台で際立ったパフォーマンスを発揮しているが、小倉勉氏は鎌田のプレースタイルが差異となっていると言及している。

小倉 勉

鎌田がブンデスリーガよりELで活躍できているのには理由があると私は考えている。それは、プレスが強い相手に対して、鎌田は輝きを放てるということ。彼はワンタッチプレーだったり、相手が飛び込んできた時にかわす技術や、冷静で素早い判断力に長けている。長期的なリーグ戦よりも、短期決戦のELの方が、相手のプレスは強くなるからこそ、より彼の技術力や判断力が活きている。

バルセロナ相手に躍動の鎌田大地「常に先手を取れていた」

とりわけ鎌田が世界からスポットライトを浴びたのは、EL準々決勝のバルセロナ戦だった。決勝点をアシストしたことに加え、世界的名手であるスペイン代表MFセルヒオ・ブスケツらを華麗にいなすプレーには、現地メディアも称賛の言葉を送っていた。

小倉 勉

バルセロナ戦にしても、最初はライン間でボールを受けていたので、そこまで強いプレッシャーはかかっていなかったが、そこからボールを奪いにくるバルセロナ守備陣に対しての外し方だったり、咄嗟に厳しいと判断した時は外す前に裏へパスしたりだとか、相手の様子を見て素早く前を向いて仕掛けたり、ワンタッチでボールを出したり、あのバルセロナを相手に鎌田は常に先手を取れていた。それは彼の判断力と技術力を活かしたプレーが、バルセロナのようにプレッシングが強い相手に対して非常に有効的だった。

鎌田大地が掴んだフランクフルト監督の信頼「心理的にも作用」

EL準決勝は、今季プレミアリーグでも7位と好成績を残しているウェストハムとの対戦だったが、猛烈なハイプレスを武器とする屈強なイングランドクラブに対し、ゴールに直結する結果は残せなかったものの、相手の嫌がる動き出しやプレーで勝利に貢献した。リーグ戦では相手の守備ブロックの打開に苦労する姿も見受けられるが、着実にコンディションを向上させている要因の1つに、オリヴァー・グラスナー監督の存在もあると小倉勉氏は語っている。

小倉 勉

むしろ鎌田は、フランクフルトよりも実力が下のチームに守備を固められて構えられてしまうと、スピードがとりわけあるタイプではないので、やや苦戦する様子が見て取れる。なので、果敢にプレスを掛けてきたり、ボールを奪いにくる相手の方が、鎌田は本領を発揮しやすい。あとは、監督との信頼関係。数シーズン、紆余曲折があって、好調な時期もあれば、メンタル面を理由に出場機会を減らされた時期もあった。今の監督になってから、一定の信頼感は掴めていて、安定感のある起用をされている。調子が良ければ最後までフル出場するし、そこまで良くない時でも60分、70分くらいまではピッチに立たせてくれている。その安定感のある起用が心理的にも作用して、鎌田の好パフォーマンスにも繋がっているのは確かだろう。

鎌田大地の日本代表定着は?「カタールW杯でジョーカーに…」

ドイツ1部のクラブで主力に定着し、欧州の舞台で結果を残している鎌田だが、日本代表メンバーの常連に定着することはできていない。小倉勉氏は日本代表が採用しているシステムと、森保一監督が求める守備の強度を理由に挙げつつ、システム変更の際のジョーカーとして期待できると太鼓判を押している。

小倉 勉

日本代表の招集が少ないのは、今採用しているシステムのところと、守備の強度のところだと思う。フランクフルトは、1トップ2シャドーのシステムで、シャドーのポジションが最適な主戦場となっている一方、日本代表は4-3-3システムで固まりつつあり、鎌田はウィングタイプではないし、インサイドハーフも田中碧や守田といったように、守備の強度を最優先している。ただ、私個人の意見としては、鎌田をカタールW杯でジョーカーとして持っておくべき。プレスの強いドイツやスペインに対し、中盤の逆三角形の構図を試合中に逆にして、4-2-3-1システムのトップ下に鎌田を置くのは非常に効果的だと思っている。トップ下ダブルボランチのシステムであれば、守備のリスクヘッジをしながらも、トップ下に置くことで、両ワイドの選手も活きてくるから面白い。三苫薫と伊東純也のようにサイドでボールを受けてから勝負する選手を起用するのであれば、相手守備の裏もかけて配給もできる鎌田は相性が良いはず。

ELで躍動する鎌田大地のまとめ

【引用:EL公式Twitter】

鎌田は今季ELで5ゴール1アシストを記録しているが、2019-20シーズンの同大会でも6ゴール2アシストを残しており、まさに“EL男”として好パフォーマンスを継続している。強豪クラブがひしめく欧州の舞台では、より猛烈なプレッシングを受ける局面が多くなるが、そのような環境こそ、鎌田の判断力と技術力が輝く土俵であると小倉勉氏は言及していた。日本代表にはまだ定着できていない鎌田ではあるが、ドイツ代表、スペイン代表の強豪国と対戦を控えるカタールW杯では、ELで見せているような鎌田のプレスをいなす特長が大きな鍵を握るかもしれない。

当記事のインタビュイー

小倉勉のプロフィール

U-17日本代表 ヘッドコーチ… AFC U-17選手権優勝

日本代表 コーチ… 南アフリカW杯ベスト16

U-23日本代表 ヘッドコーチ…ロンドン五輪ベスト4

大宮アルディージャ 監督…J1残留

ヴァンフォーレ甲府 ヘッドコーチ…J2優勝

横浜F・マリノス SD…2017年〜2022年

東京ヴェルディ ヘッドコーチ…2022年〜現在

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ジョータツ

「Off The Ball」編集長。 大手サッカー専門メディアに過去6年配属。 在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。 「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。 人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。 趣味はサウナ。