カタールW杯において、大会屈指の破壊力を誇る“無敵艦隊”スペインの攻撃を牽引しているのが、FWダニ・オルモだ。ルイス・エンリケ体制で取り組んでいる、パスサッカーとハイプレスを織り交ぜるハイブリッドなサッカーの中心選手として、卓越したテクニックと豊富な運動量を備えたダニ・オルモのプレースタイルと人物像を紹介する。
ダニ・オルモの基本プロフィール
生年月日 | 1998年5月7日 |
国籍 | スペイン |
所属クラブ | RBライプツィヒ |
ポジション | FW、MF |
身長 | 179cm |
利き足 | 右足 |
経歴 | NKディナモ・ザグレブ→RBライプツィヒ |
ダニ・オルモのプレースタイル
ダニ・オルモは主に攻撃的MFの位置で起用されるが、最前線のウィングでも起用される。
彼の武器は、バルセロナユース育ちの名に恥じない高い技術にある。特筆すべきであるキック精度はパスの長短問わず素晴らしいものであり、単純なパスだけでなくアイデアに富んだ高難易度のパスも状況に応じて正確に出す冷静さも持ち合わせている。また対峙した守備をかわそうとする時にも、スピードで押し切るのではなく、ボールコントロール力や足技を生かして相手をいなすようにして前進する。ワンタッチパスや難しいトラップもいとも簡単にこなし、一つ一つのプレーが堅実正確であるダニ・オルモを単調な守備だけで無力化するというのは無謀に近いだろう。
基本的に彼はサポート役ではあるが、前線にいる以上チャンスがあればゴールも当然狙う。そのシュート能力も高いものがあり、GKが届かないコースへ無慈悲にコントロールされたシュートを放ってくるという、とても恐ろしい選手である。
ダニ・オルモのスーパープレー
ブンデスリーガで彼が2020-21シーズンに記録したゴールとアシストがこちら。
まだ20代前半と若い選手であるが、落ち着いたプレーはベテランの風格が既に漂っている。
W杯コスタリカ戦で決めた先制弾もビッグチャンスの状況ながら冷静なトラップ、そしてGKナバスの飛び出しを見極めたチップキックでゴールを決め、確実な判断力と技術を世界最高峰の舞台でみせつけた。
ダニ・オルモのキャリア
バルセロナユースでサッカーを学んだダニ・オルモはスペインの年代別代表に呼ばれる才能の持ち主で、誰もがバルセロナで活躍するキャリアを歩むと思っていた。しかし16歳の時、クロアチアのディナモ・ザグレブに加入する。2015年にプロ初出場、2016年夏に4年契約を新たに結び成長を続け、2017-18シーズンからは名門クラブの主力として活躍する。
2018年にはリーグ年間最優秀選手にも選出されたダニ・オルモは、徐々にA代表での活躍も期待されるようになる。一部ではクロアチアに帰化する噂も囁かれたが、本人はスペイン代表でのプレーを希望。2019年11月にスペインA代表へ初招集、初出場を果たした。またクラブでもCLで得点をあげるなど注目の若手として移籍オファーも届いた彼は2020年1月、遂にクロアチアから旅立ち、ドイツのRBライプツィヒへ移籍した。
ブンデスリーガでもその才能が陰ることはなく、移籍直後から出場、主力メンバーに名を連ねた。
その後東京オリンピックで銀メダルを獲得、またドイツでカップ戦を制覇して更に成熟したダニ・オルモは、スペイン代表の主力としてエンリケ監督からW杯メンバーに選出された。その選出、そして先発起用という期待に彼は早速応え、初戦で先制弾となる得点をあげた。
ダニ・オルモのエピソード
当時バルセロナのユースは人材流出が問題視されていたが、ダニ・オルモもその一人となった。クロアチアのディナモ・ザグレブを選択した理由を聞かれると彼は「モドリッチやコバチッチなど、数々の名選手がこのクラブでプレーして成長し、今はレアル・マドリードやバルセロナといったビッククラブで活躍している。自分が成長するのに良い選択肢だった」と答えた。実際に加入前には練習を見学しており、指導法に感銘を受けた彼はイングランドのクラブから受けていたオファーよりも低い条件ながらクロアチア渡航を決めた。
ダニ・オルモのまとめ
クロアチアからプロキャリアを始めた異質な選手のダニ・オルモ。繰り出される正確で繊細なプレーと意表をつくアイデアへ冷静に対応しなければ、彼の手の平で踊る事となるだろう。今後、スペインがW杯制覇に向け、鍵を握るのは彼のパフォーマンスであることは間違いないはずだ。