チェルシーは2021-22シーズン、プレミアリーグを3位で終え、UEFAチャンピオンズリーグの出場権を手にした。一方、シーズン序盤は優勝候補の一角として期待されていたものの、昨季の欧州王者として臨んだクラブW杯を含め、過密日程をこなす必要性に迫られたため、疲労の影響で早期に優勝争いの脱落を余儀なくされていた。また、チェルシーがシーズンを通して直面した課題が、クラブ史上最高額となる約150億円で獲得したベルギー代表FWロメウ・ルカクの不振による、ストライカー不足だった。チェルシーをビッグクラブまで成り上がらせたロマン・アブラモビッチ会長の退陣により、今後の資金調達の変化にも注目が集まるが、チェルシーは今後移籍市場でどのような立ち回りを見せるべきなのだろうか?現時点での実現度をあえて鑑みず、「Off The Ball」編集部内で独自の見解を談論した。
チェルシーが補強すべきCBは?
まずチェルシーが取り組むべきなのは、退団したリュディガーとクリステンセンの穴埋めですね。主将のアスピリクエタも移籍する可能性もあります。CBの確保は急務です。新たな主軸としては、ビジャレアルのスペイン代表DFパウ・トーレスが望ましいと思います。左利きで、ビルドアップ能力も非常に高いです。3バックの左に配置するのが最適かと。もしパウ・トーレスの獲得が難しそうであれば、マンチェスター・シティのオランダ代表DFナタン・アケを勧めます。同じ左利きなのに加え、彼はチェルシー在籍歴もあり、シティでもレギュラーの座を確立できていないので、本人にとっても良い移籍になるのではないでしょうか。
パウ・トーレスは本当に素晴らしいCBだよね。2021-22シーズンのUEFAチャンピオンズリーグの活躍を見て、本当に驚いた。ただでさえ左利きのCBは希少価値が高いのに、191cmとサイズもあるし、彼の縦パスのクオリティーに関しては、CBでも世界トップクラスと言えるし、前に持ち出すこともできる。今はファン・ダイクが世界最高のCBと言われることが多いが、次世代の世界最高CBはパウ・トーレスになるのではないかと期待している。チェルシーが獲得すべきCBとしては、自分はユベントスのオランダ代表DFマタイス・デ・リフトに本腰を入れるべきと考えている。彼の対人能力に関しては、世界で5本の指には入るだろう。タックル成功率やシュートブロック率も非常に高く、セカンドボールの回収も得意としている。そして、何より魅力的なのは22歳ながらチーム全体を統括するリーダーシップとカリスマ性を備えている。チアゴ・シウバも今年で38歳になることを踏まえると、新たなディフェンスリーダーの確保は進めたほうがいいと思う。
チェルシーの中盤で大幅な世代交代も…?
中盤に関しては、カンテ・ジョルジーニョ・コバチッチの年齢が上がってきたため、次世代の主力選手を確保しておきたいところですね。それさえ叶えば、カンテやジョルジーニョを契約年数が残っている段階で売却し、移籍金を確保することもできます。まず考えられるのは、クリスタル・パレスに期限付き移籍しているイングランド代表MFコナー・ギャラガーの起用ですね。昨季の活躍がとにかく素晴らしかったので、戻ってきても主力の居場所は用意されるかと。
自分も、まず優先すべきはギャラガーのレンタルバックだと思う。彼は昨季、プレミアリーグの年間ベストイレブンに選ばれても不思議ではないくらいのパフォーマンスだった。チェルシーとしては今後、彼を中心にチーム作りをするべきだと思う。それに加えて中盤を補強するのなら、レスター・シティのベルギー代表MFユーリ・ティーレマンスやイングランド代表MFジェームズ・マディソンであれば問題なくフィットすると思う。
あとは、ウェストハムのイングランド代表MFデクラン・ライスですね。100億円以上とされる高額な移籍金がネックではあるが、盟友であるマウントが在籍するチェルシーであれば、本人が希望するCL出場の条件も満たしている。カンテが退団してもライスがいれば、守備の強度は下がらない。いえ、むしろ今のライスであればむしろ高まるかもしれません。
チェルシーの課題であるエースストライカーの存在
問題は、前線だよね。チェルシーは昨季、前線の組み合わせで最適解を見出せなかったことが、優勝争いから脱落した要因でもある。ルカクの移籍が決定した今、新たな得点源の獲得が、来季のチェルシーの行方を占うのは間違いない。
候補の1人目としては、バイエルン・ミュンヘンのポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキ。バルセロナとの交渉がもし破談した場合、獲得を狙う価値は間違いなくあります。ポストプレー、クロスに合わせるスキル、個人技を含め、ストライカーに必要な能力を全て備えています。2人目としては、マンチェスター・ユナイテッドのポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド。来季のCL出場権を逃しており、テン・ハグ新監督が放出を厭わない場合は、充分に実現する可能性はあるかと。年齢面と守備の貢献度の低さを、トゥヘル監督がどう考えるか次第にはなりますが…。
典型的な9番を獲得するのであれば、エバートンのブラジル代表FWリシャルリソンは適任かと思う。降格争いしていたクラブの中で、10ゴール5アシストと孤軍奮闘の活躍を披露していた。プレミアリーグで長年にわたって得点を量産している実績も充分。チェルシーのようなビッグクラブに移籍するタイミングとしては適切のはず。彼ほどの選手であれば、トッテナムやアーセナルも欲しがるだろうから、獲得するのなら早めに動くべきだね。
※ブラジル代表FWリシャルリソンは2022年7月1日にトッテナムへの完全移籍を発表。
ストライカー獲得失敗に進めるべきチェルシーの“プランB”
マンチェスター・シティがハーランド、リバプールがダルウィン・ヌニェスという才能溢れるストライカーをすでに確保していることを考えると、チェルシーも優勝争いをするのであれば即戦力のストライカーは必須ですね。
もし納得のいくストライカーの確保が難しいのであれば、シャドーの選手が得点を奪う戦い方を、シーズン前のキャンプの段階から固める必要が出てくるかもしれない。シティのイングランド代表MFラヒーム・スターリング、リーズ・ユナイテッドのブラジル代表MFハフィーニャの獲得に成功すれば、前線を流動的に配置する戦い方は可能であるし、トゥヘル監督の得意とする分野でもある。いずれにしろ、新たなストライカーを据えるのか、もしくはシャドーを得点源とする戦い方をするのか、早期の決断に迫られる。
チェルシー夏の補強策のまとめ
2021-22シーズンのチェルシーは、CL出場権の獲得に成功した一方、ルカクの不振によるストライカー不足もあり、早優勝争いからの早期の脱落を強いられることになった。来季の優勝争いに向け、ストライカー、もしくはシャドーのポジションで新たな人材の確保に動くことが予想されるが、今夏の補強策として、
- スペイン代表DFパウ・トーレス(ビジャレアル)
- オランダ代表DFナタン・アケ(マンチェスター・シティ)
- オランダ代表DFマタイス・デ・リフト(ユベントス)
- イングランド代表DFコナー・ギャラガー(クリスタル・パレス) ※レンタルバック
- ベルギー代表MFユーリ・ティーレマンス(レスター・シティ)
- イングランド代表MFジェームズ・マディソン(レスター・シティ)
- イングランド代表MFデクラン・ライス(ウェストハム)
- イングランド代表MFラヒーム・スターリング(マンチェスター・シティ)
- ブラジル代表MFハフィーニャ(リーズ・ユナイテッド)
- ポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン)
- ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)
- ブラジル代表FWリシャルリソン(エバートン)
上記の名前が挙げられた。アブラモビッチ政権の終焉により、チェルシーの生まれ変わりにも注目が集まる中、どのような補強を進めていくのだろうか。