来季に向けた補強が各クラブから続々と発表される中、アーセナルから飛び出たファビオ・ヴィエイラ獲得のニュースは移籍市場において驚きを与えた。移籍金は最大58億円にもなるとも言われ、その活躍に期待が集まるポルトガル人プレーヤーは、果たしてどのようなプレーを得意とする選手なのか?本記事で紹介していく。
生年月日 | 2000年5月30日 |
国籍 | ポルトガル |
所属クラブ | アーセナルFC |
ポジション | MF |
身長 | 170cm |
利き足 | 左足 |
経歴 | FCポルト→アーセナルFC |
ヴィエイラは主に中盤でプレーをするが、サイドハーフやトップ下、ボランチ、さらにはFWまで、攻撃的なポジションをいくつもこなせるユーティリティプレイヤーである。
170cmと小柄ではあるが、体格差を感じさせないキープ力とコントロール技術を活かし、密集した中盤や、激しいプレスに晒されても困ることなく攻撃の核の役割を遂行し、相手ゴール方向へ前進する力を持っている。また周囲がよく見えており、高いキック精度を生かしたゴール前への決定的なスルーパスも得意としている。
ヴィエイラは自分のポジションで待つよりも中盤に顔を出してボールをもらうプレーを好む。ボールを受け取るとすぐさま前を向き、上記で紹介したヴィエイラが持つ強みをフル活用して自分でアタッキングサードへ侵入するか、前で張っている味方へラストパスを提供して決定機を演出する。彼にボールを渡すだけでチャンスメイクが完成するといってもあながち間違いではない。
守備のスタッツはポルトガルリーグで平均的であり長所とも短所とも言えず、プレミアリーグ基準で比較すれば下の部類になると言ってよい。しかしまだ22歳であり、プレミアの厳しい環境で大きく成長を遂げる可能性を残している。
2021-22シーズン、スポルティングCP戦で見せたアシストを紹介する。中盤でパスをもらうと、プレスを受けてバランスは崩したもののボールは失わず、味方と連携しながら対峙した守備2人を振り切ってサイド深くまで侵入しクロス。見事に同点ゴールをアシストした。
5歳から地元のクラブでサッカーを始めたヴィエイラはその才能を顕にした。8歳で参加したユース世代の大会で活躍をすると、ポルトガルの名門クラブが注目。その結果ポルトのユースチームに加入する。ポルトユースでは2018-19シーズンにUEFAユースリーグで優勝した。
2019-20シーズンからポルトBチームで2部の試合に出場。新型コロナウイルスの影響によって中断を経たシーズン終盤の6月にトップチームへ初招集され、6月10日のリーグ戦でデビューした。翌季は正式にトップチームの一員となり、リーグ戦19試合に出場、また欧州CLにも6試合に出場して1得点をあげた。2021-22シーズンは1試合3アシストを2回達成するなど、リーグ戦27試合で6得点14アシストという大車輪の活躍を見せ、ポルトの国内2冠に大きく貢献した。
この活躍から多くのクラブが獲得に乗り出し、2022年6月21日にプレミアリーグ、アーセナルへの移籍が発表。移籍金は3500万ユーロ(約50億円)で、契約期間は明らかにはされていないが、クラブによると「長期」の契約を結んだという。
代表では年代別代表にU18から招集され、U-19とU-21の欧州選手権では両方とも準優勝したポルトガルのエースとして活躍。U21では準優勝チームのメンバーながら大会MVPに選出された。
8歳で出場した大会での活躍を見たポルトとベンフィカの名門2チームからオファーを受けていたが、ポルトのファンであったヴィエイラの心は当然ポルトのオファーに向いていた。しかしまだ幼いため、クラブと彼の父親がオファーに対して交渉しており、先にベンフィカからオファーが届き、後からポルトというオファー順であったため、父親とベンフィカの間で話が進み、最後はもう息子の同意だけという状況にあった。ベンフィカからの電話を待つ間、父親はガレージに車を移動させようとして息子に「電話がかかってきても出ないように」と告げその場を去った。ファビオはベンフィカと既に合意間近にあることを知っていた。ほどなくして父親の携帯が鳴り、ファビオがその電話に出ると相手はベンフィカ。準備が順調に進んでいるかを尋ねる相手に対して彼はこう答えたという。
「いや、いや、私はFCポルトに行くつもりだから。さようなら。」
いよいよ名門アーセナルでプレミアリーグに挑戦することとなったファビオ・ヴィエイラ。アルテタ監督も期待するその才能が、群雄割拠のイングランドでどこまで通用するだろうか。持っているポテンシャルはまさしく宝石のようであり、近い将来「絶対的なチャンスメーカー」として、クラブ、そしてポルトガル代表で名を馳せているかもしれない。彼のさらなるチャレンジに注目していこう。