バルセロナでメッシが着用していた背番号「10」を継承したスペイン代表MFアンス・ファティ。バルセロナユース育ちの彼は、名門の伝統を10代のうちから取得し、トップチームで素晴らしい活躍を見せていたが、2023年夏にプレー時間を求めてイングランドのブライトンへ期限付き移籍し、日本代表MF三笘薫のチームメイトとなった。今回はそんなファティについて、かつての同僚である日本代表MF久保建英とのエピソードも含めて紹介していく。
生年月日 | 2000年10月31日 |
国籍 | スペイン |
所属クラブ | ブライトン&ホーブ・アルビオン |
ポジション | MF |
身長 | 178cm |
利き足 | 右足 |
経歴 | FCバルセロナ→ブライトン&ホーブ・アルビオン(loan) |
ファティは右足を利き足として左ウイングに陣取り、インバーテッドウイングとして中に切り込んでゴールを狙うタスクを担う。まさしくクロスを多用しない「バルセロナの戦術」とマッチしており、アカデミーで育ったファティにもこの哲学が浸透している。
ファティのプレーデータを見ると、ドリブルの面では印象とは異なり特に突出しているとは言い難い。しかし実際は相手を翻弄して中に切り込みゴールを奪う。実は彼の強みは、データに現れない箇所にある。
それは狭い局面の打開力である。常にチャンスを作ろうと動くファティは、もちろん相手DFとの勝負もするが、味方との連携で直接対決することなく躱していくことが多い。ワンツーで崩したり、味方の動きに応じて出来たスペースを突いたりと、彼の「オフ・ザ・ボール」の動きは世界最高水準にある。これを可能にしているのは高い推察力と体の動きによる翻弄にある。
一方で彼のフィジカルは平均レベルであり、「ドリブラー」としての仕事をこなすことは少ない。またファティの左足は簡単なパスやクロスは出せるものの、右足には及ばないため、中に切り込むことが出来ない右ウイングで起用されるとサイドでの勝負を挑むしか無くなり、バルセロナの戦術による要因も相まって、プレーがあまり良くない。逆に言えば、既に最高峰のプレーヤーであるファティは、まだ進化する可能性を秘めているのである。
2019-20シーズンのインテル戦、彼がCLでの初ゴールをあげたシーンを紹介する。交代後僅か1分30秒でCL史上最年少得点をあげたことでも話題に上がった得点だ。
高い洞察力から仲間とのワンツーを通じてフリーのスペースを生み出し、ゴールの左端に正確なシュートを放った。このワンツーの前もボールを受けるために自分からスペースへ動いており、彼の高い能力がよく分かるシーンである。
父、また兄もサッカー選手という家庭に生まれたアンス・ファティは、兄がセビージャのユースチームに加入したことをきっかけに、地域クラブを経てセビージャユースに加入した。その後2012年、10歳の時にバルセロナユースに加入する。ここで彼は久保建英ともプレーしていた。またU12の大会で久保らと共に来日。得点王に輝く活躍で優勝した。
2019年7月24日、ついにプロ契約を結ぶ。第2節のベティス戦で交代出場によりデビューを果たすと、第3節のオサスナ戦では後半からの出場でゴールをあげた。この時ファティは16歳304日で、バルセロナ史上最年少での得点者となった。ファティはここからクラブ史上最年少先発出場、クラブのCL最年少出場&得点(インテル相手に交代後1分で決めてみせた)など、数々の最年少記録を更新していった。
2020年9月23日、トップチームに正式に昇格する(今まではユース所属だった)。背番号は退団したビダルの22を継いだ。10月24日のエル・クラシコでは対戦史上最年少得点記録を更新。バルセロナの新時代選手として輝かしい成績を残していたが、11月17日のベティス戦で半月板を損傷。手術が必要な大怪我を負い、彼の2020-21シーズンはここで終了してしまう。
失意の1年から復活を果たすべくのぞむ2021-22シーズン、ファティはメッシがつけていた背番号「10」を継承する。負傷後の初出場は9月26日と遅くなったが、9分間の出場にも関わらず得点をあげ、その実力が衰えていないことを証明してみせた。しかし2ヶ月も経たないうちに今度はハムストリングを損傷。ここから復帰した後もまたすぐに負傷をして、結局5月までほとんど試合に出ることはできなかった。
2023年9月1日にイングランドのブライトンへと期限付き移籍をすることが発表された。同じ左ウイングを主戦場とする日本代表MF三笘薫とのポジション争いが予想される。
2001年生まれの久保と1つ下のファティはバルセロナ市内の同じ学校に通っており、ユースで一緒に行動することも多かった。2人は互いを認め合う友達であり、そして競い合うライバルでもあった。好調時の試合でのコンビネーションはもはや異次元であり、当時を知る関係者は「試合前から勝敗は決まっていたよ」と語っている。
FIFAによる18歳未満の外国人選手に関する制裁措置によって久保建英がバルセロナから離れなければならなくなったとき、久保が直接チームメイトへ別れを告げたが、その中で人一倍ショックを受けていたのがファティであった。
それから数年、盟友はラ・リーガの舞台で再会することとなる。この間に久保はレアル・マドリードへ「禁断の」移籍をしていたが、ファティと久保で2ショットを撮るなど、2人の仲の良さは全く変わっていない事を伺わせた。
プレー時間を求めて、メッシから受け継いだ背番号10を脱ぎ、プレミアリーグへと挑戦することとなったアンス・ファティ。三笘薫との高レベルなポジション争いが注目される。ブライトンでの経験でより成長し、再びバルセロナやスペイン代表で活躍する姿に期待したい。