W杯では、下馬評を覆すようなサプライズを起こす国が頻繁に現れる。そのようなチームは“ダークホース”と表現されるが、サッカー専門YouTubeチャンネルでMCを務め、データ企業を経営する戦術分析家のノーミルク佐藤氏は、カタールW杯に置いて“ダークホース”となる可能性のある参加国を2チーム挙げている。
W杯におけるダークホースの定義は?
スポーツ界でよく使用される“ダークホース”だが、実際はどのようなチームが“ダークホース”にカテゴライズされるのか?ノーミルク佐藤氏は、自身の定義を示したうえで、1チーム目にカナダを指名した。
まず自分の中でのダークホースの定義を話すと、ポット3、ポット4で決勝トーナメントに進出するチームがあれば、それはダークホースと呼んでいいのではないかと。それを前提としたうえで、今回は2チームを挙げさせてもらいたい。まず1つ目の国は、カナダ。日本がW杯の前哨戦でカナダとマッチメイクしたけれど、とても良い対戦相手を選んだなと思っていた。カナダは次回のW杯で、アメリカとメキシコと共にホスト国として同時開催するので、そこに向けて、本格的にチーム強化に着手している印象がある。
カナダの“代表改革”に向けたアカデミー育成
カナダは2026年大会の開催国の一角を務めることから、決勝トーナメントに進出できるチームへと進展させるべく、近年はアカデミー育成に力を入れているという。育成の段階で“カナダ流のスタイル”を身につけさせることで、海外クラブでいうバルセロナ、日本クラブでいう川崎フロンターレのように、全員が同じビジョンを共有する統一感を高めている。
日本でいうJFAアカデミー福島のようなアカデミー育成に特化したチーム組織が、カナダにも設立されている。シグマFCというチームで、代表メンバーのおおよそ半分が、そのシグマFCの出身となっている。そのアカデミーチームで育成されてきた分、カナダ代表が今後目指していくサッカースタイルを仕込まれているため、チームの統一感は際立っているのではないかと感じている。
カナダの注目選手はエースFWデイヴィッド
カナダのキープレーヤーには、リールFWジョナサン・デイヴィッドの名を挙げている。クラブではナポリに移籍したヴィクター・オシムヘンの穴を見事に埋める活躍でゴールを量産しており、いまやリーグ・アン屈指のストライカーにまで飛躍を遂げた。まだ22歳と若く、今後のビッグクラブへのステップアップも確実視されている。
カナダのメンバーの中では、ジョナサン・デイヴィッドが今大会で最も注目されるヤングプレーヤーの1人になるだろうね。彼のような身体能力がずば抜けている選手たちを、早い段階で見出してシグマFCで鍛えることで、若い段階で戦術力を強化することができているので、頭の中が整理できているのだと思う。先天的な身体能力がある中で、後天的に戦術理解度を高めるわけだから、ジョナサン・デイヴィッドのように欧州リーグでも活躍できる人材を輩出でき始めている。
カナダのサッカーは「少し日本と近い戦い方」
カナダのサッカーは、ハイプレスからのショートカウンターを軸としているという。森保ジャパンも似通った戦術を取り入れているが、アジア仕様とW杯仕様で切り分けなくてはならない日本に対し、カナダは北中米予選から本大会に向けた戦い方を一貫できている強みにも言及した。
カナダのスタイルは、プレスからのカウンター。特に素晴らしいのは、前線からのプレッシング。少し日本と近い戦い方をしてくる。そこまでレベルの低くない北中米予選でも、失点数が極めて少ない。日本はどうしてもアジア予選での戦い方と、本大会での戦い方を分けなければいけないが、カナダは戦い方を一貫してW杯に臨めるのは、積み上げという意味でも非常に大きい。カナダはベルギー、クロアチア、モロッコと同居するグループだが、全ての対戦相手が彼らからしたら格上に該当する。それでも、予選でやれていたような戦い方でアジャストしていければ、何かを起こせる可能性は充分にある。
堅守エクアドルもダークホース候補に
そして、2チーム目に挙げたのは、エクアドルだ。日本も9月の国際親善試合で対戦しているが、エクアドルの牙城を最後まで崩すことができず、スコアレスドローに終わっていた。ノーミルク佐藤氏は、エクアドルの堅守を称えている。
もうひとつは、エクアドル。配属されたグループAはオランダが頭ひとつ抜けていて、カタール、エクアドル、セネガルが1枠を争う形が予想される。エクアドルの強みは、守備力。日本戦を含めて、直近の5戦連続で無失点。守備力の高さが非常に期待できる。5-0で圧勝のような派手なことにはならないが、3試合で、例えば0-0、1-0、0-0で予選突破は充分に可能であるはず。
エクアドルの特長は「相手の攻撃を遅らせる」
エクアドルは各選手が運動量とスピードに長けているため、一人ひとりのカバーテリトリーが広大であるが故に、対戦相手にとってはスペースを見出すのに非常に苦労するチームと言える。攻撃面より守備面に特化している点を踏まえると、リーグ戦より、W杯のようなカップ戦向きの仕様になっている。
エクアドルは相手の攻撃を遅らせるのが非常に巧い。守備時に、1人の選手が相手のビルドアップを遅らせて、他の選手でパスコースを消して、相手の攻撃を速攻から遅攻にさせ、自陣に入ってきそうなタイミングで奪い切ることができる。中盤にボール奪取に長けた選手が揃っていて、サイドバックもデュエルに強いので、どこででもボールを刈り取れるチームだね。
エクアドルの注目選手はダイナモMFカイセド
そんなエクアドルのスタイルを体現している存在がブライトンMFモイセス・カイセドだ。21歳と若く、プレミアリーグでも目覚ましいパフォーマンスを披露している。そのハードワークと球際の強さは、若き頃のカンテを彷彿とさせる。今大会のブレイク候補筆頭の1人と言える。
エクアドルのキープレーヤーは、やはりカイセド。このチームは、自分たちでボールを回してゴールを奪いにいく、スペインのようなスタイルではない。しっかりとボールを奪い切るというところがポイントになるし、カイセドはいまやプレミアリーグでも屈指の守備的MFに飛躍を遂げているので、かなりの存在感は放つことだろう
カタールW杯のダークホース候補のまとめ
カタールW杯でサプライズを起こす可能性のある“ダークホース”候補として、ノーミルク佐藤氏はカナダとエクアドルを指名した。アカデミー育成に力を入れ、ハイプレス・ショートカウンターを選手たちに根付かせる長期プロジェクトが実を結び始めているカナダ。群雄割拠の南米予選を突破し、無失点を継続する鉄壁の守備を軸に、W杯というカップ戦で強さを発揮しうるエクアドル。両チームが今大会でどのような存在感を放つのか注目したい。
ノーミルク佐藤のプロフィール
株式会社Lifepicture代表取締役、YouTubeCH「ミルアカ」MC『ノーミルク佐藤』。
複数webメディアの運営や企業の経営改善、マーケティング、プロモーション、教育事業を行う傍ら、自社でサッカーのデータラボを立ち上げ、独自にデータの収集・分析・開発を行う。
ABEMA「ゼルつく」の専属データマンとしての出演、ABEMA「FIFAワールドカップ2022抽選会生中継〜最速予想&分析SP〜」などの出演、GOAL主催Jリーグ版NXGN2021選考委員等も務める。